インターンシップ参加報告②
はじめに
Entrepreneurship through Acquisition(ETA)という言葉を聞いたことがありますでしょうか。ゼロから起業するのではなく、既存企業を買収し、自らCEOとして経営する起業の形です。代表的な手法であるサーチファンドは、1984年にスタンフォード大学ビジネススクールで考案されました。欧州ではIESEやIEが特にこの領域で有名だと思いますが、LBSでもETAの授業は人気で、学生の熱量の高さを感じます。
私自身、MBA入学前にはほとんど知らなかった領域ですが、この夏、オーストラリア・ニュージーランドを中心にETA投資を行う会社で、リサーチを中心としたインターンを経験しました。今回は、その機会をどう見つけ、何を学んだのかを書きたいと思います。
どうやって見つけたか
MBAのインターンには、大企業が正式な選考プロセスを設けるStructured型と、求人が表に出ておらず、自分で企業や人にアプローチして機会を作るUnstructured型があります。私は柔軟な機会を求めて、後者を中心に探しました。
テーマについて、元々ETAでインターンを探していたのではなく、ソーシャルインパクトに興味があり、インパクトファンドをまず候補先にリストアップを行い、アプローチをかけていました。しかし、いくつか反応もある中で、近年はESG Backlashや各社の投資環境の変化もあり、新規投資や採用を抑えている先もあることが分かり、徐々に関心の対象をインパクト投資から一段抽象化して、新しい投資手法に取り組んでいる先くらいの粒度へとシフトさせました。
その中で、たまたまLinkedIn経由で繋がっていた先に相談したところ、かなり柔軟に機会を検討いただけたこともあり、スコープのすり合わせを経て、インターンの機会が実現しました。
内容と学び
インターンではETAの仕組みを学びつつ、日本市場への進出可能性を検討するため、事業承継市場の構造とソーシング課題の調査を主に担当しました。特に日本のETA業界においては、ソーシングのハードルが高いという課題認識があり、業界構造上、なぜそれが発生していて、どのように解決を図れるかを取りまとめて、示唆を出すことを依頼されました。
実際に取り組む中で、現在のサーチャーの方や、中小企業を承継し、経営されている方にお話を伺い、その多くが米国・欧州MBAの出身者ということもあり、個人的な繋がりを作る上でも大変有益な機会でした。
事前の設計どおり働き方の自由度も高く、カウンターパートと壁打ち相談しながら、調査設計を主導する形で、調査仮説を検証し、報告書へと落とし込みました。
インターンを通じて、業界構造や課題に対する解像度が上がったことも学びでしたが、MBA在学中に実施する意味として、MBAで学ぶ理論と現場とのギャップを肌で感じられたこともよい経験でした。
例えば、MBAでは投資仮説の立て方や企業評価について学ぶ機会はありますが、実際のETAで最初に直面するのは、評価以前に「買収候補企業とどう出会うか」の問題です。
最新のスタンフォード大学の調査でも、累計の買収成立率は58%にとどまっています。つまり、サーチファンドを始めても42%は企業買収に至りません。
また実際にこの領域にディープダイブしてみて、印象的だった点は、海外で確立しつつあるETAの仕組みを、日本市場にそのまま持ち込めるわけではない点です。
米国などで成功した投資実績を説明しても、日本の事業承継市場では経営者との信頼関係や仲介者とのネットワークなど、異なる構造があります。海外で生まれたビジネスモデルを日本市場にどう適応させるのかという問いについて、MBA卒業生が理論と現実を橋渡しする姿を間近で見ながら、考えられたことも、大きな学びでした。
終わりに
MBAにおいて、インターンはまさに「経験の学校」であり、積極的に挑戦されることをおすすめしたいです。
Unstructured型のインターンは、そもそも求人票が存在しないことも多く、「探す」というより、自ら動いて、機会を「作る」感覚に近いと思います。興味のある領域があれば、インターンの募集有無に関わらず、まず人に会い、話を聞いてみることをおすすめします。仮にインターンにつながらなくても、その過程自体がMBAで得られる大きな学びの一つだと思います。

