Global Experience (GE) ボストン&ニューヨーク編
Boston and New York Global Experience
“Banking and Asset management”をテーマに、ボストンおよびニューヨークにある金融機関を訪問し、アセットマネジメント業界や銀行業界への理解を深めることを目的としたプログラムです。金融機関に加え、ボストンではMIT SloanとHarvard Business School、ニューヨークではColumbia Business Schoolを訪問し、教授陣による講義を受ける機会もありました。特に今年は、プライベートクレジット市場の拡大や生成AIの進化が金融業界に与える影響といった最新トレンドについて、金融機関およびアカデミア双方の視点から学ぶことが主要なテーマとなっていました。
世界トップクラスの金融機関やアカデミアから業界の最新動向を直接学ぶことができる貴重な機会であり、金融セクターにおける今後のキャリアにも活かせると考え、このGlobal Experienceを選択しました。
ハイライト
①金融機関への訪問
今回のGEの目玉は、ボストンとニューヨークにある金融機関へのOrganization Visitsです。LBSから、ヘッジファンド、クオンツ運用会社、インデックス運用会社、G-SIBs、法律事務所、金融当局など20社以上の候補リストが提示され、学生は自身の関心に応じて5社を選択して訪問しました。私は、Baupost(バリュー投資で著名なヘッジファンド)、State Street Global Advisors(世界最大級の資産運用会社)、ニューヨーク連邦銀行、Apollo(オルタナティブ投資大手)、Morgan Stanley(米系投資銀行)を訪問しました。また、別途学生自身がネットワークを活用して追加のOrganization Visitをアレンジすることも求められており、グループで協力して3社の資産運用会社への訪問も実現しました。
短期間で多様な金融機関を訪問したことで、同じアセットマネジメント業界内の中でも、バリュー投資、クオンツ運用、インデックス運用など、ビジネスモデルやカルチャーが大きく異なることを実感できました。役職など肩書がない学生であるからこそ率直な意見交換をすることができ、業務やLBSでの授業だけでは見えなかった、「グローバルな金融機関で実際にどのような人たちが、どのように意思決定をしながら働いているのか」という点について具体的にイメージを持つことができたことは非常に大きな学びでした。
また、どの企業を訪問しても、自然と話題に上がったのが生成AIの進化による影響でした。特に印象的だったのは、いわゆる“SaaSocalypse”に関する議論です。AIエージェントの進化によって既存のSaaS企業が代替・駆逐されるのではないかという懸念から、ソフトウェア関連株が大きく売られた現象ですが、このテーマに対する見方は資産運用会社ごとに異なっていました。一方で、多くの会社に共通していたのは、「データセンターなどAIのインフラへの需要は中長期的に拡大する」という見方でした。ニュースやレポートではなく、実際に投資判断を行っている実務家から直接意見を聞けたことは非常に有意義でした。
さらに、ESGというテーマを通じて、ヨーロッパとアメリカの考え方の違いを実感できたことも印象に残っています。後述のグループディベートに向けて、ESGフレンドリーな投資戦略がアセットマネジメント業界や気候リスクに与える影響について各社に質問したところ、多くのアセットマネージャーから、「欧州ベースの顧客は規制や投資家ニーズを背景にESGを重視するpreferenceが強く、それに応じてポートフォリオにもESG要素を組み込む一方、米国ベースの顧客については、地域差はあるものの、ESGは重要なテーマではなくなっている」といった率直な声が聞かれました。中には、「政治的論争につながる可能性もあり、あえて話題にしない」という声もあり、かなりリアルな温度感を知ることができました。私はもともとESGやソーシャルインパクトに関心があり、LBSではこれまで比較的前向きな文脈で話を聞くことが多かったため、地域によってここまでスタンスが異なることは新鮮でした。LBSで学んでいるだけでは見えなかった、アメリカのリアルな状況を知ることができたことは、とても貴重な経験でした。

②ビジネススクールへの訪問
金融機関だけでなく、ボストンとニューヨークのトップビジネススクールを訪問したことで、多様な視点を学ぶことができました。
まず初日に、LBSのRichard Portes教授とStephen Schaefer教授から、アセットマネジメント業界のトレンドやリスクに関する講義を受けました。このセッションが、その後の企業訪問に向けた基礎知識となり、一週間を通じて非常に役立ちました。
その後、MIT Sloan、Harvard Business School、Columbia Business Schoolを訪問し、それぞれ第一線の教授陣による講義を受講しました。MIT Sloanでは、元SEC委員長のGary Gensler教授からプライベートクレジットについて、Harvard Business SchoolではLuis Viceira教授からハーバード大学基金の運用について、Columbia Business SchoolではTano Santos教授からバリュー投資について学びました。個人的には、Gary Gensler教授のような金融規制・政策の最前線を担ってきた人物から直接話を聞く機会に巡り合えたことに感動しました。
また、大学基金の巨大な資産運用や、プライベートクレジット、バリュー投資といったテーマは、アメリカ市場ならではの豊富な実例や歴史的蓄積があるからこそ、より深く学べる領域だと感じました。LBSとは異なる強みやカルチャーに触れられたことも含め、他校のビジネススクールを実際に訪問する醍醐味を味わえた貴重な機会でした。

➂グループディベート
GEの最終日には、グループ対抗のディベートが行われました。
議題はプログラム開始前に提示されており、ヘッジファンド、クオンツ投資、ESG、プライベートクレジットに対する規制など、アセットマネジメント業界における最新トレンドを踏まえたテーマが設定されていました。学生は、一週間のOrganization Visitを通じて得た知見も活用しながら、自分たちなりの主張を構築することが求められます。
私たちのグループに与えられたテーマは、ESGフレンドリーな投資戦略に対する “Against” サイドでした。前述のOrganization Visitで、EMBA出身のメンバーが自身の豊富なネットワークを活かして複数社との面談をアレンジしてくれたため、アメリカの金融機関におけるリアルな温度感を知ることができました。結果として、教科書的な内容にとどまらず、具体的な事例や視点を交えながら議論を展開することができ、無事ディベートで勝利することができました。


総括
短期間で多数の金融機関やビジネススクールを訪問できたことで、それぞれを比較しながら話を聞けたことが非常に有意義でした。同じアセットマネジメント業界の中でも、企業によって投資哲学や考え方が大きく異なっており、多面的に業界を理解することができました。
また、ニューヨークをはじめ、アメリカが世界の金融システムの中心であることを改めて実感しました。例えば、日本ではまだ成長途上と言われるプライベートクレジットについても、アメリカではすでに巨大な市場が形成されており、リスクも含めてより実践的かつ先進的な議論が行われていました。
金融業界で働いていても、短期間でこれほど多くの金融機関から率直な意見を聞ける機会は決して多くないと思います。実務家、規制当局、そしてアカデミアまで含め、多様な視点に触れられたことは、LBSの学生だからこそ得られた非常に貴重な経験でした。
GEはLBS MBAの目玉プログラムの一つだと聞いていましたが、実際に参加し、その理由を強く実感した一週間でした。GEの行き先は、「日本からはなかなか行きづらい場所だからこそ選ぶ」、「自身の関心のある業界やテーマを深掘りする」など、さまざまな観点で選ぶことができると思います。私は、関心の高いテーマだったこともあり、一週間を通して集中力を持って参加でき、また、MBAだけでなく他プログラムから参加している学生との交流からも多くの学びを得ることができました。きっとどのGEを選んでも、その場所ならではの学びや出会いがあると思います!


