MBA受験体験記No.2 / 私費 / 金融
基本情報
出身業界:投資銀行(日系証券IBDにて、主にFIG(金融セクター担当)チームで業務に従事)
職歴:MBA入学時点で約5年
留学形態:私費・休職
海外経験:非日本人(日本生まれ日本育ち)。海外経験は海外旅行、会社の研修(1か月程度)のみ
出願校:London Business School(1R)、Cambridge Judge Business School(2R)
合格校:London Business School、Cambridge Judge Business School
GMAT:690(V:35 Q:49)
TOEFL:110(R:30 L:30 S:27 W:23)
奨学金:無し
キャンパスビジット:無し(旅行や研修でロンドンを訪問した際にキャンパスに立ち寄った程度の経験は有り)
Why MBA
形式はなんであれ、一度日本の外に出て生活したり勉強したり働いたりしたい、という気持ちが最もPrimitiveな動機でした。生まれてから今までずっと日本で過ごしてきた中で、学校に仕事にプライベートに、完全なるComfort Zoneが自分の周囲に出来上がってしまい、もう一度自分自身の価値観や考え方を揺さぶる経験が欲しい、そのために海外に行きたいと感じていました。加えて、留学生として日本に移住してきた両親を持つバックグラウンドから、日本で何の不自由もなく育つ一方で、ふと「こんなにもみんなと普通に過ごしているのに、国籍が違うって何だろう、文化が違うってなんだろう」と思う瞬間が時々あり、そうしたことを多国籍の空間に浸かって考える時間が欲しい、とも考えていました。以上の理由から、いつか留学を、と考えていました。
よりキャリアに絞った観点では、今後シニアポジションに向かっていく上で必要なスキルを学ぶ場所としてMBAが最適だと感じたことが動機となりました。投資銀行にてジュニアバンカーとして5年間を過ごし、ハードスキルの獲得に一定の手応えを感じる一方、シニアポジションで求められる役割や責任、スキルに非連続性を感じるようになり、一度時間を取って職場の外で学び直しをしたいと考えていました。以上を踏まえ、留学先のプログラムとしてMBAが最適だと考え、受験することを決意しました。
Why LBS(学校選択)
大前提として、留学をするならば英国に行きたい、と考えていました。子供の頃から英国文化に憧れ(かぶれ)ており、人生の中で英国で過ごす時間を持ちたいと常々考えていました。よってMBA受験を決断した際、自然と英国の各校が志望校群となりました。英国×MBAという観点で各校のプログラムを検討した末、以下の理由でLBSを第一志望としました。
1. 英国校の中で唯一2年間のプログラムであること
年々時間の流れの速さを実感するようになっており、ある程度時間に余裕をもって勉強したり交流したり考え事をしたりしたいと思っていました。そのため、2年間のプログラムを優先的に考えました
2. ロンドンにあること
直近の業務でFintechに関連する案件に接する頻度が増え、今後のキャリアのテーマとしてFintechについて学びたいと考えていました。ロンドンは欧州を代表するFintech企業の集積地であり、そこで学ぶ / ネットワークを作ることに大きな魅力を感じました
世界有数の国際都市であり、学校そのものと同様にロンドンという都市全体に様々なバックグラウンドの人々が集まっており、学校外での社交や遊びも文化的な刺激に富んでいる点に魅力を感じました
3. 北米やアジアの学校も含めたFTのRankingで常にトップクラスの評価を得ていること
相応の経済負担が発生する中で、しっかりとしたReputationとName Valueを持った学校に行きたいと思っていました
4. 学生のDiversityに富んでいること
学生の大部分がInternational Studentであり、また前職の分野もバラエティに富んでいると聞き、魅力に感じました(この点については入学した今、想像以上のDiversityを感じています)。こうした環境の方が非英語ネイティブである自分も比較的学校に貢献しやすいと考えました。また、前述のような文化面での交流を求めていた自分のニーズにも合致しました
最終的には出願したLBSとCambridgeの両校からオファーを獲得することができました。受験準備をする過程でCambridgeの魅力にも多く触れることができ、いざ両校からオファーを受領した際はじっくり時間をかけて悩みました。様々なポイントを天秤にかけて考えた結果、上記の理由から当初の志望順位通り、LBSに進学することを決断しました。MBA受験生としてあまり一般的な学校選択の仕方ではないかと思いますが、もし近しい考え方を持った方がいらっしゃればご参考いただければと思います。また、(エッセイやインタビューで何を言うかは別として)留学そのものや留学先選定の動機に貴賤はないと思いますので、どんな考え方を持つにせよ、自信を持って突き進んでいただければと思います。
受験スケジュール
大まかなタイムラインは以下の通りです。前提として、休職での留学を目指すため通常業務と並行して準備を行うことになり、基本的に平日はほとんど使えませんでした。よって、振り返ってみると一般的な受験生よりも少し時間がかかったように感じています。全体的には、通常業務の繁忙と自分の現状、目標出願時期を見比べてうまくスケジューリングできたのではないかと思っています。
- 2019年冬
- 試験等準備の順調な進捗に淡い期待を寄せ、2020年の夏(1R)から冬(2R)の出願を目標に、受験準備開始
- 志望校や志望動機がまだ曖昧ではあるものの、とにかく英語の試験のスコアが必要ということで、AgosのTOEFL対策コース(Speaking)の受講を開始
- 2020年1月
- TOEFLを受験(初回)。106点獲得。ある程度勝負できる点数だと思ったため、TOEFLの勉強をここで一度終了
- AgosのGMAT対策パッケージに申し込み、受講開始
- 2020年春~夏
- コロナ禍から来る心身の疲労と、勤務先で従事していた案件が佳境を迎えたことから、GMATの勉強を中断。進捗ペースを考えて、改めて出願目標時期を2021年の夏(1R)に設定
- Agosや海外MBAドットコム等の団体が主催するMBA説明会・学校別説明会に参加
- 2020年10月
- 業務の繁忙が少し落ち着いたことからGMATの対策を再開
- GMATを受験(初回)。670点獲得。初回にしてはまずまずの感触
- 2020年12月
- GMATを受験(2回目)。690点獲得。やや足踏み
- 2021年1月
- GMATを受験(3回目)。630点獲得。スコアをキャンセル
- 2021年2月
- LBSの在校生・卒業生とコンタクトを開始。以前参加したWebinarで共有された連絡先や、一度面談した方からの紹介等を活用してコンタクト
- 2021年3月
- Agosの岡田氏とカウンセラー契約を締結
- 正式に出願校を、LBS、Cambridge、Oxfordの3校に確定
- Ox-Bridgeの2校の英語スコアの要求水準をクリアするため、TOEFLの勉強を再開
- TOEFLを受験(2回目)。107点獲得
- 2021年5月
- TOEFLを受験(3回目)。110点獲得。各校の要求水準をクリアしたため、TOEFL対策はここで終了
- 2021年6月
- GMAT受験(4回目)。690点。自己最高点の更新に失敗。歴代のLBS合格者(日本人)のスコアレンジに十分に入っていたこと、今後エッセイや推薦状等の準備に注力する必要があること、VとMのバランスがそこまで悪くないこと、等を理由として、カウンセラーと相談してスコアメイクの終了を決断
- 2021年8月
- LBS 1Rの準備が佳境。推薦状とエッセイ、LBS特有のSmall Questionsの準備に時間を費やす
- 2021年9月
- LBSの1R に出願
- Cambridgeの2R(10月中旬〆切)に向けて準備を開始。在校生とコンタクトを開始
- 2021年10月
- LBSのInterview Invitationを受領。InterviewとVideo Essayに向けて対策を開始
- Cambridgeの2Rに出願
- 2021年11月
- LBSのInterviewを実施。職場の遠い先輩にあたる卒業生の方と実施(英語)。こちらの言いたいことにじっくり耳を傾けてくれ、またInterview終了後に暖かい励ましの言葉もかけてもらい、一定の手応えを得る
- CambridgeのInterview Invitationを受領
- 2021年11月29日
- LBS担当者から電話があり、合格通知
- 直後にCambridgeのInterviewを実施。Cambridge大学で実際にマクロ経済学を教えている先生と実施(英語)。典型的なWhy MBAに加え、面接官の関心分野(グリーン経済)にも話題が広がり、やや苦戦の感触
- 2021年12月2日
- LBSから正式な合格通知をメールで受領
- 第一志望のLBSから合格を受領したこと、第二志望のCambridgeの結果を待っていたことから、当初予定したOxfordへの出願を行わないことを決断
- 2021年12月20日
- Cambridgeから合格通知をメールで受領
- 2022年1月
- 家族、カウンセラー、お世話になったLBS及びCambridge両校の在校生と相談し、LBSへの進学を決断。MBA受験終了
お世話になった予備校・カウンセラー / 活用した教材・リソース
テスト対策から具体的な出願カウンセリングまで、基本的にはAgosからのサポートを軸として受験準備を進めました。Agosの門を叩いた理由は、準備を開始した当初、氾濫する断片的な情報の数々に圧倒されてしまったため、まずは網羅的且つ整理された情報が揃っているデパートに行こうと思ったからでした。その後、受験中の様々なタイミングに応じて適切なサポートを得ることができ、毎回色々なリソースを探して回る手間が省けて良かったと実感しています。
また、同様の理由から、日本において長くMBA受験生をサポートしているEd氏にも相談に行きました。その年の受験全体の傾向についてレクチャーしていただいたり、インタビューの質問事例集を共有していただいたり、多くのクライアントを抱え多忙の中でも適切なサポートを得ることができ良かったと感じています。
自分自身の受験期間を振り返ってみると、母語で相談・議論できることの重要性を実感しています。自分は脳内の考えを言語化することに特に苦労するタイプだったので、エッセイの構想段階でAgosの岡田氏と日本語で喧々諤々議論して内容を詰めることができたのは、かなり大きな価値があったと感じています。とはいえ、予備校やカウンセラーは、どこ / 誰が絶対に良いということはなく、各個人との相性が重要だと思いますので、受験生の皆様はぜひ色々とコンタクトしてご自身に合うパートナーを探していただければと思います。
教材については、GMATは基本的に公式の問題集とAgosのコース受講生に配布される教材を利用していました。個人的に子供の頃から数学に苦手意識があったため、ジェイマスの教材を取り寄せて、数学の復習も行いました。また、Verbalについてはスコアが伸び悩んだ際にG-Prepの中山道生氏の個別レッスンを受講しました。最終的に目標としていた700超えを達成することができませんでしたが、どれも受講・学習していた際の満足感・理解度は高かったです。GMATに関してはとにかく我流に走らず、プロに相談して準備を進めることが大切だと感じています。TOEFLについては、AgosのSpeaking対策クラスと、市販の問題集を活用しました。
インタビューを含め、英会話全般の練習用リソースとしてはSkimaTalkというオンライン英会話のプラットフォームを活用しました。元々は勤務先の入社時研修の一環として利用を開始したのですが、登録されている講師のクオリティが高く、研修終了後も自腹を切って断続的に利用していました。こうしたプラットフォームでネイティブスピーカーと会話することにある程度慣れることができ、受験時のインタビューもパニックになることなく準備・対応することができました。英会話については一朝一夕では解決しない部分が多いため、まだ本格的に受験を検討していなくても、慣れるために練習を積んでおくことをお勧めします。最近はオンラインを中心に英会話リソースがかなり豊富になっていますので、ぜひご自身に合うリソースを探していただけると良いと思います。
受験プロセス全体を通じての所感 / 受験生へのアドバイス
受験プロセスの全体を通じて最も苦労したことは、やや抽象的ではありますが、自信を保つことだったと感じています。自分のあまりにも「普通」なバックグラウンド(男性、国内大学学部卒、金融、留学・駐在経験なし、特筆すべき趣味・課外活動経験はなし等々)を過去の合格者や他の受験生の様々な面白エピソード・武勇伝と比較して自信を失ったり、GMATが伸び悩む中で合格者平均を調べて自信を失ったりしていました。自分の心配性な性格も相まって、とにかく精神状態をポジティブに保つことが難しかったと記憶しています。カウンセラーや数人の友人と自分の人生や職業経験を振り返り、自分がどういう人間なのか、どんなことができる(できない)のか、将来どういうことがしたいのか、を何度も何度も繰り返し話し合い、励まされながらようやく受験を仕上げた、という感覚を持っています。こうした話し合いの中で、どんな人でも個人個人がユニークな経験を持ちそれがユニークな価値になるから、自信を持って自分のストーリーを伝えきることが重要だ、という励ましを何度も受けました。この励ましを、同様の悩み・苦しみを経験するであろう受験生の皆さんにそのままお贈りしたいと思います。
また、上記に加えて、受験期間中に客観性を保つことにも苦労したと、改めて振り返ると感じています。例えば、上記の「自分のストーリーを伝えきる」について、時に自分の言いたいことばかりに考えが集中して、「読者(アドミ、面接官)が理解できる内容になっているか」「そもそも読者が読みたい、聞きたい内容なのか」という点を疎かにしてしまったタイミングが多々ありました。前者については、例えば出身業界特有の用語やコンテクストを説明なしに盛り込んでいないか、自分の文化圏で美徳とされている行動・価値観が果たして読者の文化圏でも同じ受け止め方なのか、に注意を払うように何度もカウンセラーからアドバイスを受けました。また、後者については、受験する学校が大切にしている価値観やキーワードを丁寧に自分のストーリーに織り込むことの重要性をプロセスが進むにつれて感じるようになりました。受験生の皆様には、時折立ち止まって、第三者の目も借りながら、自分の受験書類を客観的に眺めてみることをお勧めしたいと思います。
入学しての所感
入学し、授業がスタートしてから1か月程度ではありますが、既に様々な刺激を得ており、また小さな挫折も感じています。
まずLBSの同級生ですが、入学前から聞いていた以上のDiversityとMaturityを体感しています。世界中のあらゆる地域から、様々な経歴・経験を持った同級生が集まっており、日々の何気ない会話や授業中の議論から多いに刺激を受けています。また、同級生の多くから、大人の落ち着きと相互へのRespectを感じており、居心地の良い学習・生活空間が形成されていると実感しています。加えて、共にLBSに入学した日本人同級生の層の厚さにもありがたさを感じています。それぞれが出身業界での素晴らしい活躍・経験を経てLBSに集っており、またLBSにおいてもそれぞれの関心分野において積極的にチャレンジする方が多く、日々刺激を受け、また「日本」という括りの中でもいかに自分の視野が狭かったかを痛感しています。まだ留学は始まったばかりですが、LBSに来たからこそ出会うことができた日本人同級生とのつながりにも感謝しています。
また、まだ限られたコマ数の授業しか受講していませんが、LBS教授陣の授業のうまさにも圧倒されています。もちろん、教授間でのスタイルの違いやレベルの濃淡はありますが、総じて授業に工夫を凝らしており、学生からの活発な質問や意見表明も相まって、どの授業も刺激的です。中高時代や学部生時代は授業中によく寝てしまうタイプだった自分でも、ほとんど全ての授業で集中力を保って、楽しく受講できています。
一方で、既にいくつかの挫折も感じています。まずは語学面です。私は特に留学や駐在経験もなく、所謂「ドメ人材」ではありますが、同時にある程度自分の語学力に自信を持っていました。以前、他の媒体に投稿した合格体験記では、傲慢にも自分の語学力を誇り、訳知り顔で語学学習の重要性について自説を開陳していました。いざ留学生活を始めてみると、ネイティブスピーカーや他国出身の留学生のスピード感溢れるコミュニケーションについていけず、自分の短いながらも伸びきった天狗の鼻は完全にへし折られてしまいました。改めて、継続的な語学学習の重要性を認識するとともに、例え文章が脳内で整いきっていなくてもどんどん発言する度胸の重要性も感じるようになりました。
また、「度胸」に関連して、少しずつ留学生活に慣れを感じるようになる中で、無意識に自分の周りにComfort Zoneを再構築し、そこから外に出て挑戦することを億劫に感じ始めた自分がいます。挑戦をし続ける同級生の姿を見て、臆病な自分の心に再度ムチ打って頑張らなければと決意を新たにしています。
最後に
私は数多くいるMBA受験生のあくまで1ケースに過ぎず、受験生の数だけ異なる受験のプロセス・ストーリーがあります。私は受験生時代に「答え合わせ」をしている気分で諸先輩方の体験記を読み、その全てを自分と比べて一喜一憂していました。これは精神状態をポジティブに保つ観点で全くヘルシーではありませんでした。私の体験記を読み、ご自身の状況と照らし合わせ、ぜひご自身が共感できる部分だけを参考にしていただければと思います。私の体験記が少しでも受験生の皆様のお役に立つことがあれば幸いです。
最後に、自分のMBA留学にあたって、寛大な理解と支持・支援を与えてくれた家族、友人、職場の方々、MBA各校の先輩方に改めて感謝の意を表したいと思います。2年後に恥ずかしくない姿をお見せできるように、ロンドンの地で日々精進したいと思います。
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