受験体験記No.4 / 私費 / 弁護士

MBA2022

基本情報

  • 出身業界:弁護士
  • 職種:M&Aを中心とした企業法務
  • 職歴:9年半(入学時)
  • 留学形態:私費(ロースクールに加えて2校目の留学については勤務先に社費制度が存在しないため費用は自己負担しているが、卒業後は勤務先に復帰)
  • 海外経験・英語使用頻度:アメリカのロースクール(LLM)留学(2019年8月~2020年5月)
  • 合格校:LBS, Oxford, Cambridge
  • GMAT:690 (V35, M49)
  • IELTS:7.5 (R9.0, L8.0, S6.5, W7.0)
  • 奨学金:無
  • LBSキャンパスビジット:Interview invitation後interview前にキャンパスビジット

 

Why MBA

【前提】

私の所属する法律事務所では、弁護士としての視野を広げる観点から、2年間を原則として海外への留学や国内外での企業・官庁への出向等をすることが推奨されています。伝統的に、1年目はアメリカのロースクール(LLMコース)に留学し、2年目はアメリカの法律事務所に出向をするというルートが中心であり、現在でも大半の弁護士はその選択をしています。そのような中で、私は、1年目はアメリカのロースクール(LLMコース)に留学し、2年目~3年目にイギリスのビジネススクール(MBAコース)に留学するというイレギュラーな選択をしました。

 

【MBAを選択した理由】
  • 依頼者に対する付加価値の高いリーガルサービスの提供 (specialist+α)

これまでの実務経験の中で、法律専門家(specialist)として法的観点に関する知識・経験は十分であるにもかかわらず、ビジネスそのものや隣接領域(ファイナンス、会計、税務、人事など)についての知識・理解・関心が乏しいが故に、依頼者を完全には満足させられていない弁護士を多く見てきました。先例がないような複雑で巨大な案件になるほどこの傾向は顕著になります。また、英語が共通言語となるクロスボーダーディールになった途端にクオリティがガクンと落ちる日本の弁護士が多いという問題意識もありました。

そのような中で、MBAへの留学を通じて培う知見やネットワークは、依頼者に対して多角的な観点から付加価値の高いサービスを提供する上で、非常に強力な武器(+α)になるのではないかと考えるに至りました。とりわけ、私が専門とするM&Aやコーポレートガバナンス等の領域はMBAとの親和性が高いと思っています。

また、数としては極めて少数であるものの、直属の上司を含めビジネススクールを卒業した事務所の諸先輩方がインターナショナルなコーポレートロイヤーとして第一線で活躍していることもMBAを選択するという判断を後押ししました。

 

  • 今後のキャリア展開におけるブランディング

海外のトップロースクール(LLM)とトップビジネススクール(MBA)のいずれも卒業している弁護士は日本では数えるほどしかおらず、グローバルに見ても稀有な経歴であるため、他の弁護士と差別化するという観点から今後のキャリア展開において一定のブランディング効果があると考えました。もちろん最終的には中身の問題であることは言うまでもありませんが、依頼者が弁護士のような専門家を選ぶ際の判断材料として経歴が一定の意味を持ちうるということは、少なからずあるのではないかと思われます。

 

  • グローバル人材として必要な素養の獲得

仕事の性質上、依頼者である企業の経営陣の方と接する機会が少なくないのですが、世界経済、国際金融・マーケット・国際情勢等のマクロ的な観点が話題になることも多く、そういった事項について見識を持ち合わせていないこと(法律バカであること)について恥ずかしく感じていました。このように、法律業界というドメスティックなインナーサークルの外に出てグローバル人材として知見を広げる必要があると痛感していたこともアメリカの法律事務所以外での研修を希望した理由の一つでした。

 

Why LBS

【アメリカのMBAを選択しなかった理由】

アメリカのロースクールへの留学を通じて、アメリカにおける人々の考え方、行動様式、日本との文化的な差異などについてある程度理解を深めることができたため、より多様性のある環境で学びを深めたいと思い、ヨーロッパのビジネススクールをターゲットにしました。また、自分の年齢・職務経験に鑑みてもヨーロッパのビジネススクールの方がフィットしていると考えました。

 

【LBSを選択した理由】

ヨーロッパのビジネススクールのうち、当初は、トップスクールであるLBSとINSEAD、リーガルインダストリーにおいてはAlumniネットワークが意味を持つ可能性のあるOxfordとCambridgeを受験することを検討しました。しかし、その後各学校のカリキュラム等について調査を進めていくにつれて、INSEADはプログラムの内容が自分の興味関心と一致していていないと分かったため、最終的にLBS、OxfordとCambridgeを受験することにしました。

OxfordやCambridgeはfacultyとの面談等を通じてアカデミックな雰囲気に魅力を感じましたが、以下の理由により最終的にLBSを選択しました。

 

  • LBSはプログラムの期間が長くより充実した成果を得られると考えたこと(アメリカのロースクールへの留学を通じて、1年のプログラムは短すぎるということを実感しました)
  • LBSは卒業時期やカリキュラムがフレキシブルであり、学校のカリキュラムの外側で自主的な活動がしやすいと考えたこと
  • LBSは歴史が古くAlumniが世界中で他業種にわたり活躍しているためネットワークが強力であること
  • 現役の学生も多様な国籍・バックグランドを有する優秀な人材が集まっており、刺激的な学習環境であると思われたこと
  • 優秀な日本人が多数在籍しており日本人コミュニティを通じて多くの学びが得られると考えたこと
  • M&Aロイヤーとしてファイナンス分野に関して相当つっこんだ学習をしたいと考えたこと

 

受験スケジュール及び準備

【全体スケジュール】

勤務先での業務に支障が出ることのないよう、MBAの受験準備はロースクール留学前の勤務終了後(2019年7月)から開始し、基本的に留学期間中の空き時間を利用してアメリカで準備・受験しました。スケジュールの概要は以下の通りです。なお、私の場合には運よく比較的短期間で受験準備を終了することができましたが、留学期間中で仕事をする必要がなかったため集中的に時間を捻出しやすかったこと、ヨーロッパの学校のみをターゲットにしていたためGMATでそれほど高いスコアを出す必要性/プレッシャーがなかったこと、これまでの人生でペーパーテスト慣れしていたため何となく試験の勘所をとらえやすかったこと、職務経験が特異なので他の受験生と差別化したEssayを書きやすかったこと、といった事情もありますので、あくまでも一つの例として参考にして頂ければと思います。

 

2019年

  • 6月
    • 事務所での留学前勤務終了
  • 7月
    • YESにてSC講座を集中的に受講(10回程度)
  • 8月~10月
    • 渡米。ロースクールでの新生活が始まったため準備できず
  • 11月:
    • MBA受験準備開始(できればRound2、遅くともRound3出願を目標)
    • IELTS受験→出願スコア獲得
    • GMAT準備開始→Prepを3回受けたところ700~740だったため11月末の受験を決める
    • GMAT受験→出願スコア獲得
    • 留学カウンセラー(1人目)をリテイン(スコア、職務経験、経歴等を前提とするとRound2合格の可能性は相当程度あるといわれたため、Round2での出願を決意)
  • 12月:
    • 留学カウンセラー (2人目) をリテイン
    • Essay等の出願書類の作成

 

2020年

  • 1月:
    • 出願
  • 2月:
    • Interview Invitation
    • Campus Visit
    • Interview準備開始
  • 3月:
    •  Interview(skype)
    • 合格

 

【IELTS】

ロースクールの授業やアメリカでの日常生活の中で英語漬けの生活になったため特に準備に時間をかけずにスコアを出せと思います。ただし、アメリカの田舎で受験する場合には、受験機会が限られていることに注意が必要です。私が住んでいた地域では1か月~2か月に1度開催されるかどうかというレベルで、試験会場も非常に遠いケースが多かったため、すぐに結果を出さないと出願に間に合わないというプレッシャーがありました。

 

【GMAT】

人によって得意不得意があり必要な勉強内容・量も大きく違うと思いますので、早い段階で問題の雰囲気をざっと見て集中的に勉強する分野を決めるのが良いと思います。私の場合は、数学や論理的思考力を問う問題に苦手意識はありませんでしたが、SCは大学受験英語の知識では歯が立たないという話を聞いたため早い段階で集中的に勉強しました(7月にYesに10回程度通いました。)。SCだけは早期に勉強を完了しておいたことが、短期間の準備でGMATを終了できたことの大きな要因だったと思います。IRとAWについては時間がなかったので無勉強で受験しました。なお、IELTSほどではありませんが、アメリカの田舎で受験する場合には、やはり受験機会が限られていることに注意が必要です。

 

【Essay】

Essayについては、まずは、自分なりのストーリーを組み立てた上で、勤務先の同僚、友人(特にMBA出身者中心)、家族 とbrain stormingをしました。次に、この過程を通じて考えたアイディアを文章化し、カウンセラーに見てもらい、コメントをもらってリバイスをするという作業を行いました。その後、現役の学生やAlumniから学校についての情報を収集した上で、出願校の特徴に沿った形にEssayの内容を調整していきました。最終的には、カウンセラーとの複数回に亘るディスカッションやドラフトのやり取りを経てブラッシュアップし、現役の学生やAlumniからもドラフトに対するコメントを頂いて完成させました。

私は12月からEssayのドラフトを開始しましたが、LBSのapplicationはEssay以外にも記載事項が非常に多く相当時間を取られるので、可能であれば時間的な余裕をもって早期に準備を開始されることをお勧めいたします。

 

【Interview】

面接前1週間程度で準備をし、カウンセラーのモックインタビューを複数回受けました。但し、LBSのinterviewに先立ってCambridgeとOxfordのインタビューを受けていたことはいい練習になっていたと思います。なお、アメリカで出願をする場合は北米くくりになって、interviewもアメリカ国内で行うのが原則のようです。私の場合は、当初は自分の住んでいる州にAlumniがいないのでAlumniの住む大都市にinterviewを受けに行く予定でしたが、コロナ等々の影響もあり最終的には日本のAlumniとのskypeでのinterviewになりました。

 

使用教材、予備校、カウンセラー

【IELTS】

公式問題集に掲載されている過去問を2、3回分解きました。SpeakingとWritingについては、留学先のアメリカ人の学生に質問をして気の利いた表現についてアドバイスをもらいました。

 

【GMAT】

全体:

GMAT Prepを3回分解きました。

 

Math:

GMAT Tool Kitのうち難問に分類されている問題を1周解きました。

 

Verbal:

SCについてはYESにて1か月間集中的に講座を受講しました。それ以外の分野については、GMAT Official Guide BookとGMAT Official Advanced Questionsを1周解きました。また、試験直前に「GMAT 重要単熟語」の前半半分くらいを丸暗記しました。

 

【カウンセラー】

Essay対策:

EdとStephen Roundを利用しました。Edはレスポンスが早く、多くの情報を持っている点、Stephenはレビューが丁寧な点がよかったです。日本にいるEdとアメリカにいるStephenを併用することで、時差を利用して効率的にドラフトをリバイスできたのは良かったと思います。またEd、Stephenともに過去に弁護士のバックグランドの受験生を指導したことがあったので、リーガルインダストリーへの理解も深く、テンポよくディスカッションができました。

 

Interview対策:

Ed、Stephen Round、Matthewのモックインタビューを利用しました。いずれもカウンセラーも有意義なフィードバックをくれました。Interview については、Essayがきちんと論理的に構成されていて、行間を説得的に説明できる状態であれば、それほど準備は大変ではないと思います 。OxfordやCambridgeはfacultyのinterviewなのでトリッキーな質問がでますが、LBSのinterviewは極めてstraight forwardなものだと思います。

 

入学後に感じたこと

【学生に戻るという経験】

日本とアメリカで大学院を出て、さらにイギリスでも大学院に行って、人生のうち何年間を学校で過ごすんだと我ながら思いますが、一旦実務を離れて学生の立場に戻り、利害関係のない人間関係の中で自分の興味関心に従って学ぶということは何物にも代えがたい経験だと思います。幸いにもそのような機会に恵まれた以上は、無駄な時間を過ごすことなく少しでも有意義に過ごしたいと日々感じています。

 

【Diversity】

入学前からMBA、特にLBSはDiversityが売りだと聞いてはいましたが、実際に始まってみると想像以上のDiversityに驚きました(アメリカのロースクールとも比べ物にならないくらい多様です)。例えば、私の属するStudy Group(必修科目の課題やプレゼンを一緒に行う小グループで、入学時に学校がDiversityを考慮して割り振ります)のメンバーは、①国籍はイギリス、イタリア・フランスのハーフ、インド、アメリカ、チリ、日本、②職業はコンサルタント、金融、ファミリービジネス、歯医者、弁護士、③年齢は20代半ば~30代半ば、という感じで、普通に生活していたら一堂に会することはまずないような構成です。コロナという難しい環境の中で、お互い(家族を含む)をrespectしあいながら協力し切磋琢磨しています。プログラムが始まってまだ2か月程度ですが、Study Groupのメンバーはかけがえのない存在です。

 

【Programme】

Non-native×Non-business backgroundのダブルパンチで人の4倍くらいは授業の予復習に時間がかかっていると思います。もっとも、初めて学ぶことや、実務において断片的に触れていたものの体系的に整理していなかった事項について改めてきちんと学ぶことが多く、楽しく勉強できています。実務経験が豊富な学生が多いので、教室内でのディスカッションではテクニカルな側面(特にファイナンス/会計/統計など)を中心に非常に学びが多いと感じます。他の国の学生の方が日本人より知識・経験・思考力が優っているとは必ずしも思わないのですが、残念ながら英語力を含め発信する力の差が大きく、表現して共有できなければせっかく持っている知識等も全く意味がないなとつくづく感じます。なんとか付加価値を出せるように試行錯誤する日々です。

他方で、全体的に職務経験も最大でも10年程度の学生が大半なので、会社全体のコーポレートガバナンスや意思決定メカニズムに関する制度的・理論的な枠組み、役員・取締役会・株主総会といった機関それぞれの機能・責任などについては必ずしも理解が十分ではない学生も少なくないように見受けられますので、そのあたりについては実務経験が相対的に豊富な私が貢献できる(すべき)ように感じています。

 

受験生へのメッセージ

職場にMBA出身者がほとんどいなかったことに加え、アメリカで受験準備をしたため、情報がない中手探りで準備をしなくてはならなかったのはなかなか辛かったです。周りにMBA出身者や受験生が沢山いる環境の方でなければ、受験準備の早い段階でネットワークを作って情報を集めるのがよいと思います。

ペーパーテスト(特にGMAT)については、人によって最適な勉強方法は大きく異なると思いますので、自分と同じようなバックグラウンド(アカデミック・職業・英語力)の人の意見が一番参考になると思います。ネットに落ちているあまたある情報に左右されすぎないことが効率的に短時間で必要なスコアを出す上で重要ではないかと思います。

エッセイは自分のこれまでのキャリアと一貫性のあるストーリーを論理的で説得力あるように仕上げることに尽きると思います。誰もが人生の中で感動的で目を引くような非凡な経験をしているわけでは必ずしもないですが、自分がしてきた経験が唯一無二であることは間違いないので、自分の経験をベースにどのようにユニークなストーリーを書けるかが腕の見せどころではないかと思います。その際、独りよがりの内容にならないようにするためにカウンセラーや同僚・友人等からの客観的なコメントはとても大事だと思います。

おそらく多くの方にとって人生最後の受験ですし、せっかく貴重な時間と費用を投資する以上はやれることは全てやりつつも、他方で全てが思い通りに進むとは限らず最終的には運や巡りあわせの要素も非常に大きいと思いますので、人間万事塞翁が馬という気持ちで臨んでください!