GBE滞在記 – イスラエル編 “Contextualising the Drivers of Innovation”

GBE, 授業, MBAカリキュラム

GBE(Global Business Experience)はLBSのMBAプログラムの一環で、世界各地の複数都市の中から1か国を選択し、経済・文化・歴史・政策等様々な観点を現地で学ぶ1week courseです。私も含めて、一緒に参加した友人からも「通常の授業以上に非常に深い学びや経験が出来た」と聞いており、大変満足度・充実度の高いプログラムとなっています。今回は、昨年9月に参加したイスラエルGBEについて投稿します。

テーマ:Contextualising the Drivers of Innovation

イスラエルは、世界有数のイノベーションを生み出すハブとして経済発展を遂げ、多くの国や企業から注目を集めてきました。例えば中心地であるテルアビブはわずか40万人都市ながら、1,500を超えるスタートアップが拠点を置き、事業を展開しています。その”成功”の裏には何があるのか?-その理由を複数の観点から探っていくことが本GBEの大きな目的です。 

イスラエル自体は、国として決して恵まれているわけでは決してありません。狭い国土、乏しい資源、国内外での宗教的な対立、歴史の浅さ(建国から70年ほど)等、むしろ経済発展を阻害する要因の方が目に付くほどです。その厳しい環境の中でも、高い技術力を持った人材、徴兵経験で培う精神力や軍事技術、充実した政府支援や教育機関が、イノベーションを後押してきました。加えて、積極的に受け入れてきた移民の存在やホロコーストを生き延びた経験から、”強く生きる”・”失敗を恐れない”というマインドが国家の土壌にあるとも言われています。今後更なるイノベーション創出を目指す日本や日本企業に何が必要か、現地踏査を通じて自分なりに考察する有意義な時間を得ることが出来ました。 

概要

・日程: 2019年9月8日から9月15日まで
・行程: エルサレムに2泊⇒テルアビブに4泊
・参加者: 約55名。今年は北米・南米とアジア人の割合が多めでした
・課題: ワーキンググループでのスタートアップ訪問報告+ディベート

スケジュール

・イスラエルのスタートアップエコシステム
   -スタートアップ企業への訪問(×4社)
   -現地の起業家・アクセラレーターによるSpeaker Session

・イスラエルの歴史と文化
   -エルサレム旧市街地
   -ホロコースト博物館
   -現地の家庭料理体験(Eat With)

・パレスチナの実態と経済発展
   -West Bank地区のアントレプレナーとのMeet up session
   -Business leaders(証券取引所トップ等)によるSpeaker Session

GBEを終えて

テーマである経済成長の背景については、個人的には以下の3点が非常に印象に残りました。
①産官学一体となった(国単位での)スタートアップエコシステム
②グローバルマーケットを狙うプロダクト・サービス
③旺盛なチャレンジ精神
特に①に関しては、政府主導のもと、資金援助やハード面での支援があり、外資を含めた投資家たちの呼び込みあり、また大学や研究機関との橋渡しも支援しながら、「Start upを育てる」という仕組みが国全体でうまく廻っている印象でした。興味深いことに、Speaker Sessionの中で、現地のアクセレーター責任者がイスラエルの現状が日本との対比で語るシーンがありました。まさにこの①~③の真逆で、
・各企業ごとにサイロ化されたベンチャー支援の取り組み
・(人口減待ったなしの中での)国内市場フォーカス
・リスクテイクに二の足を踏む国民性(若者含む)
というのが彼らが認識する日本の現状でした。・・・・概ねその通りですよね。確かに、私が回ったStart upはすべてイスラエル外の海外市場を狙ったもので、政府からの補助金やVC支援のもと、海外からの人材も多数受け入れて事業を展開していました(例えば、高プロテインのバッタを食用に加工・販売する食品会社、高速道路向けのセンサー(事故防止、交通整流化等)を開発する会社、患者負担の少ない革新的な手法の医療機器メーカー等々)。イスラエルの人々も、Start upで働くこと=”cool”である、と広く認識されており、各企業のmission達成に向けて心なしか生き生きと働いているように見えました。

なにも「日本下げ、外国上げ」をしたい訳ではありません。私が強く感じたのは、日本の自国の恵まれすぎた市場(規模、参入障壁、特異性等)のデメリットです。イスラエルのように、自国市場が小さいがゆえに国を挙げて政策を打ち出し、また人々は自らアイデアを着想してグローバル市場で戦い抜くような”必要性”ならびに”本気度”は、閉鎖的な市場を作り出してきた今の日本では生まれにくい環境なのだと思います。

日本が更なるイノベーションやStart up創出を目指すために何が必要か。(必ずしもStart upだけが良いものだとも思いませんので、広義には)未知の領域にチャレンジして全く新しい付加価値を世の中に生み出す国になるためにどうすればいいか、という問いの方が良いでしょうか。究極的には、働く一人一人の意識改革しかないのだと思います。私自身、GBEやMBAでの体験を通じて、「新規事業創造」や「起業」というOptionを少し現実的なものとして考えるようになりました。こういった「背中を押してくれる」ような経験や刺激を、日本でどれだけ作れるかが長期的には重要だと思います。留学前に日本でぼんやりと感じていたのは、VUCAの時代と叫ばれながらもそれを見据えた具体的なアクションと取れている企業や個人は、実はそんなに多くはないのでは、ということです。一方、ほぼ間違いなく、「今までの成功モデル」で会社や個人が生き延びられる時代は終わりを迎えています。そうした中で、危機に直面してようやく重い腰を上げる対処療法ではなく、早い段階から新しい価値創出へのアンテナを高めること。一人一人が自分事としてアントレプレナーとしてのマインドセットをもち、それを国全体としてモメンタム化していくことが何より必要だと感じました。

最後に、このGBEではパレスチナ居住区であるWest bank地区の視察ならびに現地の方との交流がありました。非常に印象的だったのは、ガザ地区出身の若者との何気ない会話です。ガザ地区は今もイスラエルとの紛争が絶えず、軍に包囲されているため出入国も自由にできません。物資やインフラもなく、水不足、汚水、停電、衛星悪化等々の問題のために、人々は満足に生活すら送ることが出来ていませんが、パレスチナ人というだけでイスラエルは対立の姿勢を崩していません。私が会った彼は、その時にたまたま許可が下りて、West bank地区で我々が訪問したStart upのアクセレレーターのお手伝いをしていました。どんな悲惨な話を聞くことになるだろうか、と身構えていた私でしたが、彼からはネガティブな話は一切聞かず、「Start upでパレスチナ人の社会を変えるんだ」という強い意志を感じました。また、各国のLBSの友人たちにも「○○はどんな国なんだ?」と積極的に交流をして、このチャンスを逃すまいという強い好奇心と意欲を見せていました(もちろん英語も堪能でした)。

翻って、自分は日本という恵まれた国や家庭環境に生まれた境遇に甘えていなかっただろうか?そのチャンスを、自分自身のためだけに使っていなかっただろうか? 一緒に体験をした友人とも語り合いながら、今後のキャリア形成に大きな刺激をもらった1週間でした。

結論:LBSのGBEは最高の学びの場だと思います。お勧めです。