ロンドン名うての語り手から学ぶ、言葉の技術

MBAの授業に出ていて、これは凄い、という教授に出逢うことがある。教授の実績やフレームワークではなく、「80名もの生徒を、3時間惹きつけ続ける技術」についてである。

 

某教授曰く、MBAは教育産業でありつつ、エンタメ産業でもある。世界各国のリーダーの卵が高額な授業料と時間を投資して来ている。ロンドン・ウェストエンド名物のミュージカルの如く、観客(生徒)に面白い、と思わせ、飽きさせない工夫が必要なのである。

 

MBAの教授は世界中で引き抜き合戦が行われており、評判が良いとなれば高額サラリーでトップスクールへと移籍してゆく。世界ランク4(Financial Times:2018)LBSともなると、名うての語り手が揃うというわけだ。

 

では、その名エンターテイナーたちは、どのように観客を惹きつけているのであろうか。

 

1. テンポ・ケース・アナロジー

2. 参加性

3. 「良い人」であり続ける

  

1. テンポ・ケース・アナロジー

本題に入る前に、前述のミュージカルの話をしたい。

 

ミュージカルの三要素は、歌・ダンス・演技だと言われる。この三要素がお互いに働き合い、作品をより人々の心に響くものに仕上げている。

 

レ・ミゼラブルで言えば、「ジャン・バルジャンは息を引き取り、フォンテーヌが天に導きました」と棒読み朗読されているのを聞くのと、今まさに死にゆく俳優の演技を眼下に、名曲”Do you hear the people’s sing?”の生オーケストラを聞くのと、どちらが心に染み入るか、というのは一目瞭然である。

 

一方、MBA授業を面白くさせる三要素は、テンポ・ケース・アナロジー、およびこの3つの相乗効果であると考えている。

 

「テンポ」:テンポは、語り口、内容展開、それぞれの速度のことで、これが心地よく進まないと退屈してくる。落語やオペラ、ミュージカルといった観劇産業では、「良い音を良いテンポで出していると、音が全く意識されないようになり、観客は言葉のみに集中できる」そうだが、全く同じである。

 

日本の大学では、何年間もアップデートしていないページを上から順に読みあげるのみの退屈な教授がいると聞いたことがあるが、同じ科目でも、生徒が入れ替わるし時代も進む以上、生徒の理解度・興味は昨年と今年では違う。その場の雰囲気に合わせてテンポをカスタマイズして、盛り上がったところは時間を使い、そうでないところはカット、という臨機応変な対応ができる教授は面白い。

  

「ケース」:ほとんどの授業ではケースやゲストスピーカーが用意されるが、これらは満足度に大きく影響する。生徒をengageさせられるケース・ゲストスピーカーは下記の条件に沿っている場合が多い。

 

  • 「手触り感のあるケース」:技術難易度が高く背景説明が複雑になるケースや、抽象的な描写に終止しているケースはどうしても盛り上がりにくい。反対に、「トッテナム・ホットスパーの新スタジアム建設の投資判断」といったトピックはイメージしやすく、敷居が低く面白い。

 

  • 「具体的な裏話が聞けるゲスト」:表面的な戦略論に終始しがちな方に比べて、現場で血反吐を吐いてきた起業家や経営者の苦労話、例えば著名な広告展開の裏にどんな葛藤があったのか、といった話は人を惹き付けることが多い。まさにこの点が大都会に位置するLBSの強みであり、多種多様な産業のトップリーダー・起業家を招聘している。

 

「アナロジー(比喩):「腹落ち感」という言葉がコンサル業界ではよく使われるが、それは「なんとなく分かっていることだけれど、改めて強く納得し」、「行動に一歩近づく」ことである。MBAでも、完全に知らなかった知識を教わってふむふむ、ということもあるが、AHA!となる瞬間の多くはこの「もやっとしたものが整理される」腹落ち感であり、そこには教授による効果的なアナロジーが寄与していることが多い。

 

更にいえば、アナロジーは遠い世界から持ってきたほうがAHA!感が高まる。例えば、「テレビの価格戦略をPCの価格戦略と比較する」よりも、「テレビの価格戦略を、千両みかんの事例からの意味合いで考える」方が圧倒的に面白いのである。(詳細は東洋ビジネスオンライン・御立尚資氏の記事を参照のこと)

  

2. 参加性

日本の大学で寝ている生徒が多く、LBSではそれがありえない理由の一つに、この参加性がある。授業は教授の語りだけで完結するものではなく、生徒・ゲストスピーカー・ホワイトボード・スライド・映像の一体商品として捉えるべきである。

 

ウェストエンドの人気ミュージカル、マンマ・ミーアは、ショーの最後に、総立ちの観客を煽り、観客・オーケストラ・キャストが一体となってABBAの曲を手拍子し、踊る一幕があり、これが楽しくて足繁く何度も通うファンが続出する。

 

それと同じく、エンターテイナーとして知られる教授は、生徒を本当に効果的に巻き込む。Strategy and Entrepreneurshipの看板教授、Costas Markides教授は、生徒のengagementにおいて最高峰といえる。人の認知の癖と、それが組織に与える影響を説明するために、まず生徒に紙や数字を使った簡単なエクササイズをさせたり、それを元にディベートさせたりする。ついつい生徒が盛り上がりすぎた結果、まんまと教授が導きたい(間違った)結論にたどり着いてしまい、それを指摘されガクッとなる。この一連のプロセスのあとに説明される理論の腹落ち度は格別であった。

 

3. 「良い人」であり続ける

「良い人そう」な人の話は少々出だしが躓いても聞きたいと思うし、「なんか癪に障る」人の話は出来るだけ聞きたくない、この反応は古今東西共通するのではないか。

 

「熱心に聞き、発言にも参加する」生徒の割合、いわば授業の「視聴率」を維持するため、冒頭で恐怖政治に走る教授がいる。例えばいきなりコールドコールからスタートしたり、デバイス利用を禁じたり、事前課題を読んできたか確認する、等々。結果として視聴率は高まるけれど、この手の教授の話は大体面白くない。語りだけで視聴率を維持できないからこそ、恐怖政治に走るのかもしれない。

 

人気授業として先輩から代々語り継がれる教授は、このようなことはしない。前述のCostas教授は、まず愛嬌たっぷりの笑顔と口調で、開始3分で心を鷲掴みにする。その後も、独特のホワイトボーディング(ポイントワードだけ書くのではなく、結論をハイトーンボイスで話しながら文章全体を書き殴る)およびギャグセンス(出身のキプロスの自虐や、非ネイティブであることを逆に面白可笑しく使った誇張的な形容詞遣い等)、あるいはなんとも目が話せないテンポの緩急により、恐怖政治をせずとも9割以上の視聴率を保ち続ける。

 

 

MBAの本質は授業以外にある(ネットワーク・リーダーシップ等)というのは間違いないのだが、一方で授業もいずれ陳腐化する知識それ自体ではなく、名うての語り手の話を見れる、という視点で観ると大変に学びが多い。言葉の技術はほとんどの職種で必要となるだけに、MBAはこのような観点でも学びがある、ということをお伝えできれば幸いです。

MBAとコンサルで迷っているあなたへ

「将来の起業へ備え、今よりも経営寄りの仕事がしたい」

「グローバルでリーダーシップを発揮し、インパクトを生み出したい」

このような想いで、MBA(海外)やコンサルに興味を持ち、その2つで迷っている方が非常に多いように感じます。私はコンサルを経験した後にLBSに来ましたので、様々な方のキャリア相談をお受けするうち、どちらに行くべきか、あるいはどちらを先に行くべきか、等でお悩みの方に多く出会いました。

キャリア選択に答えはないため一概にお答えできませんし、筆者の限られた経験から語らざるを得ないという制約はありますが、本稿が上記のような志をもつ皆様へ参考になればと幸いです。

 

(細かい比較論をする前に)考慮すべき大前提

  • キャリアゴール・興味・リスク嗜好・年齢・学歴等により向き・不向きは大きく異なる:当たり前のことですが、「日本の金融に貢献したい、35歳、学部、子持ち、帰国子女」という方と、「製薬のイノベーションに携わりたい、28歳、MD、独身、純ドメ」という方を一緒くたに議論し、「MBA行ってからコンサル行きましょう」などと一般化することはできません。更に、コンサルもMBAも「とりあえず行っとけ」という認識を持たれがちですが、いずれに関しても向いている人とそうでない人もいますので、まずはご自身のバックグラウンドや興味を客観的に整理してから、取り得るオプションを検討する必要があります。

 

  • 宝くじ的な要素が大きい:MBA(本稿では海外に限った話をします)にしろ、コンサルにしろ、どの学校/会社を目指すのかによって難易度は大きく異なります。仮にいわゆるTier1スクールや トップファームと呼ばれるところを目指す場合、枠が(特に景気後退時は)非常に少なく、宝くじ的な要素が大きくなります。例えば、FT Rankingの上位10校や、MBB(McKinsey, BCG, Bain)でなければ行きたくない、ということになれば相応の実力に加えて運が必要となりますし、時間をかけてプランを練っても思うような結果が出ずに計画崩壊、というリスクも小さくありません。トップスクールでなくてもどうしてもMBAに行きたいのか(あるいはトップファームでなくてもコンサルに行きたいのか)、あるいは他オプションも受容できるのか、というバックアッププランを練り、心づもりをしておくことは大切であると考えています。

 

MBAとコンサルで得られるものの違い

  • Global exposure/leadership: コンサルは外資・日系ともに海外出張や海外転籍などの機会が豊富に存在します。それは事実です。しかしそれは、グローバルレベルでのコミュニケーション力を有しているコンサルタントに限った話です。あくまで仕事であるため、例えば英語すらままならない純ドメと、日中ハーフの帰国子女(三ヶ国語堪能)の同期同士で比較した際、どちらが海外案件に入りやすいのか、というのは一目瞭然です。特に外資トップファームには英語に苦労しない人材が豊富にいるため、社内での競争な苛烈です。日系であれば、案件さえあれば海外に長期で行ける人もいるようですが、私の友人は「海外には行けるけれど、日本語もしくは日本式のコミュニケーションになってしまっている」という悩みを持っており、日系は日系なりの悩みがあるようです。
    一方、MBAは合格さえしてしまえば、英語力にかかわらず、海外で外国人とグローバル・コミュニケーションをすることになります。外部の機会も多いため、インターン等で海外での勤務経験を積むことも可能です。これは英語を苦手とする人にとっては大きなポイントでしょう。

 

  • 本気度:再度当たり前シリーズですが、コンサルティングはクライアントのために行う仕事であり、MBAは学校です。いくらMBAにはインターンや疑似コンサル授業などがあるとはいえ、当然ながらその質・本気度はコンサルティングと比較できるものではありません。学校は自分さえよければそれで問題ないですが、コンサルタントは自分のために仕事をしているのではなく、あくまでクライアントのカウンセラーであり、クライアントにインパクトを生み出さなければ無価値です。誤解されることも多い職業ですが、少なくとも私が出会った同僚たちは、クライアントのために無私に、がむしゃらに働く人達でした。一社一社、一人一人異なるクライアントのために価値を出し続ける、その強烈なプレッシャーのもとで日々働くというのは、学校での勉強と異次元の成長カーブを生み出すことになります。

 

  • 成長ループ:MBAの真骨頂の一つは、「自分で立てたキャリアやリーダーシップの仮説をもとに、多様な機会を自分で選択し、試し続けることができる」ことにあります。仕事ではないので、こんな業界に興味がある、こんな起業アイデアがある、こんなリーダーシップスタイルを試したい、等の仮説をもとに、人に会いに行ったりインターンをしたりグループワークをしたりして、成功や失敗をし、自省して学びを得る、というループを3ヶ月単位ほどの高速で回すことができます。仕事と違い制約が少ないため、いくらでも試し、失敗することが可能です。つまり、自ら仮説検証していく、「内省型の成長ループ」といえます。
    一方コンサルの良い点として、「尊敬できるロールモデルから、高頻度でフィードバックをもらうことができる」という点があります。厳しい環境をくぐり抜けた先輩・後輩や、CxOレベルのクライアントから、日々直接的・間接的にフィードバックをもらうことができるため、自省だけでは気づき得ない視点を得ることができます。このような、「外部フィードバックによる成長ループ」を最大化するために、ファームによっては週次でのフィードバックが文化として根付いています。筆者がMBAに来てからすぐに感じた不安点として、客観的なフィードバックが入りにくいということがありましたが、「学生が故の選択の自由度の高さ」と、「責任が少ないが故のフィードバックの緩さ」はどうしてもトレードオフになってしまうのだと思います。

 

結論: すべては志次第

色々と書かせていただきましたが、一番お伝えしたいことは「どのような志をお持ちか、それ次第である」ということです。相談をお受けしていて、「コンサルとMBAのどちらが有利ですか」「とりあえずMBA(またはコンサル)に行っておいた方がいいですか」といった、「損得勘定」でお話を進められる方が数名もいらっしゃいましたが、これは個人的には大変残念なことです。無論誰にでも生活があるため損得勘定は非常に大事なことですし、志が一番と語る私は青すぎるのかもしれません。しかし、MBA受験、コンサル業務はいずれも過酷であり、「とりあえず行っておくか」という方が務まるほど甘くないという側面もあります。更に、MBAもコンサルも、未来のグローバルリーダーを輩出することが社会的な意義の一つであり、私も日々そのような意識で会社のチームメンバーと接しているつもりです。5年後でも、20年後でも良いので、社会に対してどのような貢献をしていきたいのか、そのためにどこにいたいのか、どのような経験・スキルを身に着けたいのか等の観点を踏まえ、社内外のロールモデルと話した上で自分なりにしっかりと立ち止まって考えることで、MBA or コンサルという悩みにアプローチすべきではないかと思います。

稲盛和夫氏は、「仕事をやり遂げるには大変なエネルギーが必要。そのエネルギーは、自分を励まし燃え上がらせることで起こってくる。自分が燃える一番良い方法は、仕事を好きになることです」と述べ、仕事の志の大切さを説いておられます。MBAもコンサルティングも本当に素敵な選択肢であると私は思っており、読者の皆様がどちらに行くにせよ、ご自身の志に向かって燃え上がることができることを祈っています。

英国に学ぶ、先端産業の破壊的イノベーション

筆者は日本のコア産業たる先端産業の強化を志とし渡英しています。一方、日本における多くの自動車・重工業や工程/技術集約産業、医薬/機器産業にとって、英国への注目度は高くないように感じます。(例外はあります)

とりわけBrexit後、欧州医薬品庁のアムステルダム移転に伴う医薬/機器産業の流出や、EUへの自動車輸出時の免税の(潜在的)撤廃などは、英国のGDPの2割超を占める先端産業へ壊滅的な影響を与え、日本との結びつきを更に削弱させる可能性もあります。

一方当地でモビリティ・イノベーションに携わる筆者の印象からすると、英国は依然として多くの先端産業において世界をリードしています。その魅力は、先端産業における著名なイノベーション・ハブであるシリコンバレー・イスラエル・ドイツ・中国に比肩する点も多くあると考えています。

本稿は筆者の自動運転分野でのスタートアップにおけるインターンから垣間見えてきた英国の先端産業の強みを簡易的に整理したものであり、包括的でない議論が含まれますが、先端産業に従事する読者の方の英国への関心、ひいてはLBSへの興味の契機となれればと思い筆を執りました。

 

一国における先端産業でのイノベーション創出において重要なポイントは多々ありますが、ここでは下記2点を強調したいと思います。

1. 先端産業に横展可能な、”超”先進技術を主導できる産業があること

2. 起業家・技術者・資金提供者・政策決定者から成るエコシステムが機能していること

 

1. 先端産業に横展可能な、”超”先進技術を主導できる産業があること

インターネット・人工知能・VR。これらは、軍事産業から使われ始め、その後他産業に応用された技術であることはよく知られています。あるいは自動車のカーボンファイバー・タイヤの路面識別技術・アクティブサスペンション等のコア技術の多くはモータースポーツから発展したものです。それは、軍事やショーケース産業(モータースポーツ・プロスポーツ選手向け用具等)は、費用対効果以外の指標で技術開発がなされるため、資本集約かつクローズドな研究(オープンイノベーションのメリットが少ない研究)で成長させる類の技術と親和性が高いからであると思われます。

この点において、英国は軍需・国防分野の巨人たるBAEシステムズを有し、航空宇宙分野の規模は米国に次いで二位を誇ります。さらに、オックスフォードを中心とする、「モータースポーツバレー」という名で世界的に知られる産業地域は、マイケル・ポーター教授から「世界随一の成熟した経済産業地域で、英国エンジニアリングの結晶」と呼ばれるほどの地位を確立しています。英国は、電気自動車レースのフォーミュラEの技術拠点であり、素材・回生技術等において英国企業はどの国よりも先進技術の導入に成功しています。

結果として、英国の軍需・モータースポーツ企業は、自動車部品・エネルギー等の技術で高い実績を上げるに至りました。筆者がインターンを行っているオックスフォードを拠点とする自動運転技術のスタートアップも例外ではなく、共同設立者はF1のマクラーレンの技術ラボのヘッドを務めた後にフォーミュラEのチームを設立した人物であり、自動車の電動化・自動化においてモータースポーツの知見・ネットワークが大いに活かされています。

 

2. 起業家・技術者・資金提供者・政策決定者から成るエコシステムが機能していること

シリコンバレーやテルアビブの例を挙げるまでもなく、エコシステムはイノベーション創出の中核たるものです。この点においては、言うまでもなく英国は非常に優れたシステムを有しています。

・大学主導の科学・基礎研究分野の強さ: LBSが所属するロンドン大学や、オックスブリッジを始めとする競争力の高い大学を多く有することから、トップ1%ジャーナルにおける論文の世界シェア3位に君臨

・研究の支援・法律の高レベルでの整備状況: 知的財産に関する法整備に加え、キャメロン政権時の緊縮財政でも基礎研究費は維持されるなど、研究者が優遇

・大学・政府・VCのシームレスな連携: 政府主導のプログラムや大学発の技術に紐づく形で、多分野のイノベーション拠点が構築

結果として、複合材料のブリストル、エネルギーのグラスゴーやバーミンガム、バイオのケンブリッジ等、付加価値の高い産業の技術者・資金提供者が集う拠点が英国中に存在しています。筆者が勤務するオックスフォードでは、前述の通り自動車等の先端産業が強く、私が携わっただけでも自動車・バス・航空・通信・ドローン等との多分野連携によるアイデア創出が議論されました。

 

上記のように、英国の先端産業はBrexitを踏まえても大変魅力的なものであり、筆者は日本との協働事例がもっと増えてほしいと願っています。実際、日産はリチウムイオンバッテリーの量産をサンダーランドで行っており、私の元同僚が活躍するKudan社はブリストルでドローン・ロボット等に活用できる自己位置測定・マッピング技術を日英共同チームで開発し世界トップのコア技術を持つに至っています。筆者はロンドンを拠点にオックスフォードに通ったり、他地域に視察を行ったりしておりますが、各地域における産業間連携・産学連携のあり方は目を瞠るものが多くあります。先端産業に従事されている・あるいはキャリアチェンジを検討されている読者の皆様も、ぜひ仕事や留学といった形で、同産業における英国の底力を感じ、その優れた仕組みや技術を日本の発展に役立てて頂ければ幸いです。

 

(出典:研究開発戦略センター 「英国の科学技術情勢」)

日本人留学生の夏期インターンシップ事情(MBA2019)

皆さん、こんにちは。MBA2019のNです。今回は日本人留学生の夏期インターンシップの状況について書きたいと思います。

そもそもLBSの夏休みですが、非常~~に長いです。どれぐらい長いかと言いますと、ブロックウィーク(集中講義)も夏期のアントレ等の特別プログラムも全く取らない人は、6月の半ばから、なんと9月半ば(!)まで、約3か月間、おおよそ社会復帰も学生復帰も出来なくなりそうな長~い期間の夏休み(またの名をモラトリアム期間)があります。周りの多くの学生は、就職活動の一環でコンサルティングファームや投資銀行、最近ではテック(Amazon等)、PE/VC(僅か)で、卒業後のキャリアに直接結びつくようなインターンをして過ごすことが一般的です。

日本人留学生はと言いますと、これも過ごし方は様々でせっかくなので3か月間ひたすら旅行する人もいれば、いやいや、学生なので勉学に励まなくては!と夏期プログラムを取る人も少なからず(?)います。このように様々な過ごし方がありますが、今しか出来ない過ごし方ということでインターンを選択する人が多数です。

日本人留学生のインターン事情ですが、毎年実に幅広い業界でインターンをやっています。以前の記事にも紹介がありましたが、アフリカにフォーカスした政府系のPEファンドでインターンをしている者もいれば、他のノンジャパの学生のように卒業後の進路を考え、外資系投資銀行・コンサルティングファームなどでインターンする者もおります。

さて、今年はと言いますと、まだ年が明けたばかりじゃないか!と思う人も多いと思いますが、MBAの学生は基本せっかちな性格(先が見えていないと落ち着かない!?)から既にインターン先(または方向性)を決めている者も多く、以下の通りとなっています(一部プロセス中のものも含む)。

日本:外資系投資銀行/外資系コンサル、PEファンド、スタートアップ

欧州:政府系金融機関、派遣元企業のロンドン拠点、スタートアップ(FinTech/ヘルスケア)

米国:西海岸のメガベンチャー(どうやって見つけてきた…)

例年どうかは分かりませんが、今年はスタートアップでのインターンが多い印象です。特にロンドンというロケーションから、通常時のPart-timeに限らずスタートアップでのインターン機会は非常に多く、MBAの2年生からの紹介、学内のJOB BOARDでの募集、派遣元の紹介と、皆あの手この手で見つけてきています。米国のMBAと比較しても、LBSの日本人留学生のスタートアップにおけるインターン率は非常に高いと感じています。ロンドンというロケーションは、勿論スタートアップの数が多いということもありますが、日本人を含む非英語圏の人間に対しても非常に多くの機会が開かれています。特にLBSの学生ということで、LinkedInでコールドメールをしても大抵レスポンスが返ってきます。ロケーション×ブランドを上手く活用すれば、日本人でもいくらでもチャンスがあると言えるのではないでしょうか。

先日Managing Organizational Behaviourという授業でPluralistic Ignorance(=“多元的無知” – 組織の中でトップの方針に違和感を感じたとしても、各個人は「そういう方針もあるだろう」という雰囲気に流されてしまい、そのまま全体としての方針として決定されてしまう現象)について学んだのですが、スタートアップでは大企業との比較という意味において、各個人がどのように行動しているのか、またPluralistic Ignoranceに対してどのような対策が実行されているのか、はたまたその対策がどの程度実効性があるのか等についても垣間見られる点においても、貴重な機会だと思います。

これからLBSに入ってくる皆様、将来入ることを検討している皆様、このLBS特有の長~い夏休みに、自分を見つめ直す機会、または1年生の間のLBSでの学びを実践の場で試す機会としてロンドンでのインターンを活用してみることも考えてみては如何でしょうか?

(※尚、筆者は単身赴任故、愛する妻に会いに日本に帰ります。)

学期中のインターンシップ

LBSの最大の特徴のひとつとして、プログラムの柔軟性があげられます。例えば、MBAでは卒業するまでの期間を15,18,21ヶ月の中から選択することができ、いろいろな生徒のニーズに対応できるような構成になっています。このフレキシビリティさを利用し、2年目の今期に授業を取らずにロンドンのTech Start-upでフルタイムのインターンシップをした経験を書かせていただきたいと思います。

 

プログラムの柔軟性

私はMBAに所属しており21ヶ月での卒業予定なので、2年目の学業に関しては比較的余裕のあるスケジュールになりました。そのため、似たような状況にある多くの学生は、各々自分の興味のある活動に勤しんでいます。私のように授業を一切とらず、ロンドンもしくは他国でフルタイムインターンに従事する人もいますし、授業を取りながら週に数日のパートタイムインターンや、もしくはクラブ活動に力を入れる人など様々です。クラブのプレジデントを2つ掛け持ちしているクラスメートは今学期ほとんどの時間をクラブでの活動(イベントの企画など)に費やしていました。また、中には毎週のように旅行で世界中を飛び回っている友人もいます(笑)。かといって、決して勉学を疎かにしているわけではなく、多くの授業では大量のAdditional readingが提供されますし、授業によっては実在の企業を顧客としたコンサルティングプロジェクトを行うものなどもあり、そのような授業を履修すれば相応の負荷、学びが期待できます。それ以外にも、LBSでは海外の多くのビジネススクールと提携しており、他国へ交換留学している生徒も多数います。この交換留学の機会の多さもLBSの魅力のひとつです。

このように、LBSではロンドンという立地も相まって、それぞれの学生が自分の興味に合わせて積極的かつ能動的に活動できるので、自分のやりたいことがある程度はっきりしている方にとっては最高の環境ではないでしょうか。

 

ロンドンのスタートアップ

ロンドンでは、ヨーロッパの中心なだけあり、数多くのスタートアップが生まれ、ひしめき合っています。特にテック業界はその中でも盛り上がっており、テクノロジー関連の仕事に従事する人の数は、金融業界で働く者の人の数を超えたとも言われています。LBS Career CentreのJob Boardでも、毎日のようにスタートアップの求人がアップされています(テックに限らず)。余談ですが、スタートアップの勢いに伴いVCの数も多く、そちら方面へ興味がある方にもロンドンは非常に魅力的な環境だと思います。実際、かなりの数の同級生がフルタイム、パートタイムを問わず、ロンドンのスタートアップ、VCでインターンをしています。

 

インターンシップ

私はAIビジネスに興味があり、今回、バイオメトリクス関連のAIを開発するスタートアップで、製品開発に携わりました。このスタートアップは先日シリーズAで$50mil強を調達した非常に勢いのある会社で、毎週のように新しい人材をリクルートしており、私が入社時には50名ほどだった社員も、インターンを終了する頃(12週後)には80名を超えていました。私自身はファイナンスの出身ですが、このようなこれまで経験しなかった業種、職種、環境に身を置けたことはMBA生活の中でも一番と言っていいほど大きな収穫であったように思います。

そもそも今回インターンをするにあたって、私は以下の2つを目的としていました。

  • そもそもAIとは何か、またそこに使われているテクノロジーはどのようなものかを可能な限り理解し、将来ビジネスに応用できるようになりたい。また、巷で溢れている、「AIに仕事が奪われる!」というような話がどこまでリアルなのか判断できるようになりたい。
  • 学生ではなく、社会人という文脈の中で、グローバルなリーダーシップを学び、身につける。LBSもダイバーシティな環境であることは間違いないが、学生活動と仕事では、ヒエラルキーの有無や個々人のモチベーションなどに違いがあると思った(どちらのほうが良いという話ではなく)。

1つめの目標に関しては、何となく概要を掴むことはできたかなと感じています。近年のAIブームの立役者は、deep learningと呼ばれる技術であり、またそれを支えるビッグデータの存在やコンピュータの進歩があげられます。deep learningに関しては日進月歩で研究が進んでおり、絶えず欧米の研究機関(有名大学やGoogleに代表されるテックジャイアント)が研究成果を発表しています。私が所属していたチームでは半数がPhDを取得しており、彼らがそのような論文を読み込み、製品に落とし込んでいく姿を間近にして、非常に知的好奇心を刺激されましたし、自分もその一端を担うことができ(末端中の末端ですが)勉強になりました。

一方、2つめの目的に関しては、まだまだ道半ば、むしろ2、3合目だなと思っています。今考えれば当然なのですが、初めての業界、職種でそもそものスキルが足りない中、いわゆる”リーダーシップ”を発揮をするのは非常に困難を極めました。そこで、まずは自らのやるべきこと完璧にこなしチームに貢献をすることを意識しながら、徐々に自分の仕事の領域を広げていく形で、貢献の幅を増やせるよう努力しました。一方で、今回私が所属していたチームのリーダー(プロダクトマネージャーに相当します)からは学ぶことが多くありました。まず驚いたのが、マネージャーが個々の業務に関して、かなり細かく精通し、かつスキルを有していたことです。私のチームは10人強で構成されており、同じチーム内とはいえ、その業務内容は多岐に渡り、それぞれが違った役割を受け持っています(アルゴリズムの開発、データエンジニアリング、テスト環境の構築、バックエンドなど)。そのそれぞれの業務に関して、マネージャーが課題発見、解決の道筋を立て、メンバーにコーチングしていた姿はとても印象的でした。実際、マネジメントする立場にありながらも、スキルの向上を怠らず、技術系のワークショップに参加したり、パートタイムでPhDの取得を目指しているようです。

また、個々人のパフォーマンスを最大化できるような環境づくりを怠らない姿勢など、マネジメントスキルも参考になることが多くありました。日ごろからチームメンバーとの会話を怠らないようにしているだけでなく、定期的にチームミーティングを開催し、個々人が詰まっているところはないか確認、もしあれば、適切な助けが得られるような組織運営には、スキルの不足している私も助けられました。また、プロジェクトメンバー内のひとりがご家族の不幸でチームを離れた時も、それによってボトルネックになる部分を即座に発見し、全体の締め切りを守れる範囲でプロジェクトの予定を柔軟に変更していた様子は、まさしくマネージャーとしてあるべき姿のように感じます。いわゆるマネジメントというと、どうしてもハードスキルは見過ごされがちですが、そのマネージャーはソフトスキルとハードスキルを両方とも高いレベルで発揮しており、自らが目指すべきロールモデルの一人となりました。

私は将来AI関連のプロダクトマネジメントに関わっていきたいと思い、このインターンにたどり着きましたが、その視点からも新しい発見がありました。ひとつには先にあげたようにマネジメントと言えど、技術に対する深い知識、理解が必要であること。そして、数多くの優秀なエンジニアと一緒に働き、その働き方を学べたことです。彼らは「ソフトウェアが世界を回している」という世界観を持ち、ワクワクを原動力に動いている人が多いように感じます。嫌な仕事をポジションパワーでさせることなどできませんし、もししようものならすぐに転職してしまいます。そのくらい彼らのような人材の需要は高く、だからこそ会社全体やマネージャーも働きやすい環境を作ることに注力しています。

 

まとめ

上記の他にも、ここではすべて書ききれませんが多くのことを学ばせてもらいました。スタートアップならではのスピード感、フラットで議論しやすい文化や、個々人の成果が見えやすい組織構成、柔軟な労働環境など、どこかで聞いたことがあるような話でも、それを実際に経験できたことは今後のキャリアの糧になると思います。私自身はインターンシップという選択をしましたが、先にも述べた通り、自らの興味を追求できる環境がLBS、ロンドンには揃っています。この記事がLBS受験を考えているみなさんに、少しでもお役に立てば幸いです。


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