Masters in Financeとは

ロンドンビジネススクールのMasters in Finance (MiF)は、ファイナンスプロフェッショナルに不可欠とされる高度な実務スキルを10ヶ月間 (パートタイムは22カ月間)という短期間で集中的に学び、修士号 (MSc in Finance)を取得するプログラムです。入学者数もフルタイムが約120人、パートタイムが約70人と、少数精鋭となっています。

MiFは、世界各地の金融機関などで働き、既にファイナンスのバックグラウンドを有するビジネスマンからの「より広く深く体系的にファイナンスを短期間で学びたい」というニーズに応える形でスタートしました。

MIFは、広い意味におけるファイナンスプロフェッショナルが実務において直面する新たな問題に対し、柔軟かつ創造的に挑戦できるよう、徹底的に鍛錬することを目的にしています。具体的には、4つの必修科目を通じて、ファイナンス実務の基盤となる基本的なアプローチおよびビジネスリーダーシップについて修得した後、約30科目程度の多彩な選択科目の中から自分のキャリアゴールに即した7~10科目を選択し、極めて実践的な内容を集中的に学びます。選択科目の一つとして、本プログラムを通して習得した知識・技術を、プロジェクトと呼ばれる修士論文として応用することが求められます。
これらの講義やプロジェクトの指導は、ファイナンスにおいて世界的な名声を有し、実務にも精通したロンドンビジネススクールの教授陣によるものであることは言うまでもありません。また、選択科目はCorporate Finance、Financial Engineering、Asset Management、Private Equity /Venture Capitalと非常に多岐に渡るとともに、Core Coursesで学んだアプローチを実務に応用することを目的とした内容となっており、卒業後、幅広いファイナンス関連の業務にそのまま生かすことができます。

以上のような充実したカリキュラムに加え、チャレンジ精神にあふれ多様なバックグランドを持つプロフェッショナルな学生が世界各国から集うことが、MiFの大きなもう一つの魅力です。銀行、証券会社、ヘッジファンドといった金融機関のみならず、中央銀行、政府機関、事業会社、経営コンサルタント、会計士、格付機関、弁護士、非営利団体等で、平均6年程度の実務経験を有する生粋のファイナンスのプロフェッショナルが、お互いの豊富な経験から最先端の実務を無数のグループワークを通して学び合うという素晴らしい環境です。世界における最先端のファイナンスを日々体感することができることから、金融機関等において実務経験を有する方にとっては特に有意義なプログラムといえるでしょう。 また、選択科目、クラブ活動、各種イベントを通じ、ロンドンビジネススクールMBA 等のの他のプログラムと交流する機会も豊富です。

以上のように、MiFは、①金融機関等において実務経験を有し、短期間で実務に即したファイナンスを体系的に理解したい方、②金融工学やM&A、Private Equity等のDealなど、高度なファイナンスの知識が要求される仕事での勤務、転職を予定されている方、③ファイナンス以外の分野における実務経験や学識を有する方で、実務に即したファイナンスを短期間に集中して学習したい方等に最適といえるでしょう。

MiF or MBA (あるいはMiFで学ぶ意義)

MiFへの出願を考えている多くの方は、一度くらいはMBAへの出願も考えたことがあるのではないでしょうか。

そこで、本稿ではMiFとMBAの違いについて、書いてみようと思います。※

【※本稿は必ずしもMiFを何が何でもお薦めするためではなく、あくまで違いをなるべく客観的に分かっていただいた上でそれぞれにあった判断をしていただくために書いています。筆者は現在MiFの学生ですが、昨年は別の学校でMBAコースに通っていました。それは1年制で別の学校なので必ずしもLBSのMBAとMiFを直接比較しているわけではないこと、また、あくまで筆者自身の経験に基づいた主観であることについては、御理解いただければ幸いです。】

 

(目的)

まず、MiFとMBAではその目的が異なります。

どちらのコースも、グローバルリーダーを育てることは共通の目的ですが、MiFはファイナンスのエキスパートを育てることが目的あるのに対し、MBAは経営全般のジェネラリストを育てることが目的です。ただし、例えば企業戦略等の経営面は財務諸表や株価等のファイナンス面に顕著に表れるという意味においては、MiFが経営全般を見ていないというわけではなく、ただファイナンスというツールを通して経営全般を見ている、ということなのだと筆者は考えています。

 

(カリキュラム)

MBAではファイナンスはもちろんのこと、マーケティング、組織行動論、企業戦略、アントレプレナーシップ、イノベーション、経済学など様々な科目を広く学ぶと同時に、プレゼン、コーチング、文化の多様性の理解、リーダーシップ論、グループワーク等のソフトスキルにもかなり力を入れます。また、MBAでは上記の様々な科目を統合して、総合的なビジネスプランの作成や起業家の立場となって投資家向けプレゼンを行うといった授業があります。

一方で、MiFでは学ぶ内容はとにもかくにもファイナンスです。コーポレートファイナンス、会計、投資がコア科目で、選択授業も一部を除いてファイナンスです。MBAでのファイナンスはいわゆるコーポレートファイナンスが中心ですが、MiFではデリバティブや、証券分析等の投資関連の授業も多く、自分の興味に応じて「Corporate Finance」のほか、「Risk Management & Derivatives」「Investment Management & Analysis」の三つの中から専攻が選べます(選ばなくても大丈夫です)。もちろん、MiFもプレゼンやグループワーク等のソフトスキル教育を行います(ただし、MBAと比べると少ないと思います)。

 

(コーホート)

他の大きな違いとしては、生徒のバックグランドが挙げられると思います。一般的にイギリスのMBAは3年程度の実務経験を要する点ではMiFと同じですが、MBAでは業種に特に制限はありません。一方、MiFではファイナンス分野での経験である必要があります(もっとも、「ファイナンス分野」の捉え方はそれなりに広く、銀行やアセットマネジメント等でなければならないということはなく、一般企業の財務部、コンサルや官庁等からも経験次第では十分入学可能です)。MBAではほぼ全員が異なる分野・ポジションの経験者であり、その多様性が議論に幅を持たせてくれたり、新たなアイディアが生まれる一方、MiFはファイナンスをよく知っているということが前提であり、それによりファイナンスに関する議論のクオリティと深度を保つわけです。

 

(メリット・デメリット)

MiFのメリットとしては、1年間、実務経験ある仲間たちと深くファイナンスの勉強に集中できることです。その点、1年制MBAでは、一年間であまりに多くの分野をカバーするため、良くも悪くも「広く浅く」となります。また、MBAではファイナンスのエキスパートのような生徒もいれば、初めて触れるという生徒もいるので、進度はある程度後者に合わせる必要がありますが、MiFにおいては授業スピードがとても速く、例えば筆者が1年制MBAで40時間程度の授業で学んだコーポレートファイナンスの範囲は、MiFでは1学期の最初の15時間弱の授業でほぼカバーしてしまったように思います。

一方、MiFにもデメリットはあります。特に就活における認知度はMBAの方が圧倒的に高いと言わざるを得ません。MBAなら誰でも知っていますが、MiFと言われてすぐに分かる人はイギリスの会社の採用担当者でもそうはいないようです。もちろん、LBS自体は広く知られていますが、そもそもMBAしか採用されないポジションもあり、そこのフィルターに引っかかってしまうこともあるようです(LBSのキャリアセンターの方針としては、学校での採用説明会において「MBAのみを対象とする説明会」は断っていますし、MiFとMBAとを「同等」に扱うよう働きかけているようですが、まだ道半ばというところのようです)。また、MiFと聞いて、実務経験前コースを思い浮かべる人が多いようです。実際、イギリスで実務経験者のみを対象としたファイナンス修士コースを提供している有名校はLBSとケンブリッジくらいですし、世界でもそう多くはありません。MiFは実務経験を有し、理論も体系的に学んだ、ファイナンス分野の「即戦力」なのですが、そのことが必ずしも十分に浸透していないことが一つのネックであると言えるかもしれません。就活中のクラスメイトたちは、MiFについてきちんと「実務経験後のコース」であることなどを採用側に分かってもらう努力をしているようです。

 

(どちらを選ぶべきか)

MiFとMBAは似て非なるものです。MiFはMBAの代替手段ではありませんし、逆もまた然りです。ビジネススクールというとどうしてもすぐにMBAを思い浮かべてしまいがちですが、自身のニーズに応じた様々なコースがあります。実際、LBSにもMiFとMBA以外にもMiMやMFA、Sloanなど様々なコースがあります。ファイナンス分野でのキャリアを追っていくのであればMiFは最適だと思いますし、MBAも言うまでもなく強力な武器です。一方、ファイナンス分野以外で働きたいが、知見を広げる目的でファイナンスを学びたいというのであれば、MiFは「たすきに長し」だと思います。

MiFとMBAのどちらを選ぶべきかは、当然ながら、結局のところ自身の将来のキャリアゴール次第です。いずれにしても決して安くない授業料と機会費用を払うのですから、今一度そのゴールを良く考えてみた上で後悔のない選択をしていただきたいと思います。

 

本稿がそのための一助となれば幸いです。

MiFの必修科目(MiFFT2017)

MiFの必修科目は、Investments、Financial Accounting and Analysis、Corporate Finance and ValuationおよびPurpose of Financeです。秋学期(9月上旬~12月上旬)に開講されますが、Purpose of Financeのみ変則的で、年間を通じて4回の授業があります。

必須科目では、その後の選択授業において前提となる知識を獲得することができるだけでなく、事前に座席やスタディーグループが固定されているので、同級生と交友関係を築く良い機会にもなります。

 

Investments

現在価値計算に始まり、Fixed Income、Stock Valuation(Golden Growth、P/E multiple、CAPM、マルチファクターモデル)、Derivative(オプション、先物・先渡し)まで広範に学びます。基本的な内容が中心ですが、論文を素材に最新の議論にも触れる機会があります。

授業は秋学期の前半に集中し、週2回およびTeaching Assistantによる週1回の補講があります。毎週、計算演習を中心としたグループ課題があります。教科書は、Zvi Bodie、Alex Kane、Alan J. Marcusによる「Investments」を使用します。

 

Financial Accounting and Analysis

Pre Moduleで学ぶ会計知識を前提に、USGAAPおよびIFRS双方をカバーした財務諸表分析の手法を深く学びます。講義では、実際の企業をケースにとり、そのAnnual Reportから経営状況を示す計数を算出する方法を学ぶとともに、財務諸表の計数と企業の実態に乖離がないか丁寧に読み解く訓練をします。

授業は秋学期を通じて行われ、週1回および隔週でTeaching Assistantによる週1回の補講があります。企業のAnnual Reportを分析する課題が隔週であるほか、他の週には授業に関連する時事記事を要約して提出します。教科書はChris Higsonによる「Financial Statements: Economic Analysis and Interpretation」を使用します。

 

Corporate Finance and Valuation

Investmentで学ぶ現在価値計算、Stock ValuationおよびFinancial Accounting & Analysisで学ぶキャッシュフロー分析の知識を前提に、投資意思決定、企業価値の計算方法(DCF、Multiples、APV)、負債政策および利益還元政策を学びます。

授業は秋学期の後半に集中し、週2回およびTeaching Assistantによる週1回の補講があります。毎週、実際のケース分析のグループ課題があります。うち一つは、企業を1社選択してアナリストレポートを作成するもので、最終授業でプレゼンテーションを行います。教科書はRichard A. Brealey、Stewart C. Myers、Franklin Allenによる「Principles of Corporate Finance」を使用します。

 

Purpose of Finance

「金融は何のためにあるのか」との問いから始まり、金融業界が抱える課題、IT技術革新などの外部環境変化が金融業界にもたらす影響、金融のプロフェッショナル倫理を考える授業です。金融危機以降、金融業界に対する批判的意見が高まったことを受け、真の金融プロフェッショナルを育てる目的で2016年に必須科目として設置されました。

既出の通り、年間を通じて4回の授業があります。毎回の授業に向けて、プレゼンテーション作成やエッセイ作成といった準備課題がグループに課されます。教科書は、Stephen Davis、Jon Lukomnik、David Pitt-Watsonによる「What they do with your money」です。

MiFのPre Module (MiFFT2017)

MiFのPre Module(8月中旬から9月初の2週間)では、AccountingとStatisticsの基礎的学習およびプログラムを通じてのビジネススキル開発プランの策定を行います。Personal Assessment and Developmentのみ、Pass/Failの評定がなされます。

 

Preparatory Accounting

貸借対照表フォーマットと損益口座を使用した取引の仕訳を中心に、会計の基本を学びます。簿記会計関連の有資格者は免除を申請できますが、会計にまつわるテクニカルな英語を機会としても有益です。教科書はStickney and Weilの「Financial Accounting: An Introduction to Concepts, Methods and Uses」です。

 

Preparatory Statistics

各種ファイナンス理論の前提となる確率統計の基礎学習とExcelおよび定量分析ソフト@Riskを使用した回帰分析、シミュレーションおよびリスク量計算の実践練習を行います。レクチャーに加え、PCルームでの演習が用意されています。

 

Personal Assessment and Development

組織論やリーダシップ論の学習と科学的な自己分析を踏まえて、自らの弱点を把握し、MiFプログラムを通じた自己啓発プランを策定する授業です。アカデミックな修士課程ではなく、ビジネススクールとしての特徴を踏まえた授業です。

事前にプログラムオフィスの指示に従って、上司、部下、同僚の合計15名程度に対して自分自身の360度評価アンケートを実施する必要があります。また、最終課題としてA4用紙2~3枚程度の自己啓発プランの提出が必要で、Pass/Failの評定がなされます。

MiFの必修科目(MiFFT2012)


MiFの必修科目は、、Investments、Financial Accounting and Analysis、Corporate Finance and Valuation、およびPersonal Assessment and Developmentから構成され、9月上旬から12月上旬までの間受講します。

Investments

基礎的な現在価値計算に始まり、Fixed Income、Stock Valuation、ポートフォリオ理論、CAPM (ファーマフレンチを含む)、オプション価値計算 (ブラックショールズを含む)までの広範にわたる内容を、9月上旬から10月中旬までの1カ月半で集中的に学びます。授業は週2回およびTeaching Assistantによる週1回の補講があります。これに加え、毎週大量の課題が課されるなど、質・量ともに大変ハードな授業ですが、課題を通して効率的に知識を身に付けることができます。教科書は、Zvi Bodie、Alex Kane、Alan J. Marcus、McGraw-Hillによる「Investments」を使用します。

Financial Accounting and Analysis

Pre Moduleでの基礎的な会計知識があることを前提に、収益・費用認識等の財務諸表論、退職給付やリース等のオフバランス会計、税効果会計、資本会計、連結会計、企業結合会計までの広範にわたる内容を、USGAAPおよびIFRS双方をカバーしたうえで、広くかつ深く学びます。授業は週1回で9月中旬から12月上旬まで3カ月弱で集中的に学びます。また毎週、実際のケースを元にしたグループ課題提出があり、様々なバックグラウンドの、経験豊かなスタディーグループメンバーとともに結論を導くため、実際の企業経営を意識した深い議論をすることができます。加えて、授業で取り扱った内容に関連する時事トピックの提出もあり、選ばれたトピックについては、クラスの中で学生がプレゼンを行うこととなっています。なお、教科書はStickney and Weilの「Financial Accounting: An Introduction to Concepts, Methods and Uses」を使用します。

Corporate Finance

MM理論、Trade-off theory、Pecking-order theoryに基づく最適負債・資本構成、利益還元政策、資本コスト、DCFおよびMultiple等の企業価値評価までを10月半ばから12月上旬までの1ヶ月半、週2回のレクチャー+週1回の補講で集中的に学びます。授業は、レクチャーおよびケース分析から構成され、他の授業同様、毎回の予習、復習とケース分析が欠かせません。加えて、個人課題提出と、最後の授業で行うValuationのグループプロジェクトの準備で相当な勉強量が必要です。教科書は世界のファイナンス従事者のバイブルとされる、当校のRichard Brealyの「Principal of Corporate Finance」(日本語訳本『コーポレートファイナンス」)を使用します。教授のクオリティーもさることながら、実際のビジネス現場を題材にしたケース分析をもとに、ファイナンス分野で実務経験を豊富に積んだクラスメート同士で熱い議論も行います。Group Projectで行うValuationは、企業を1社抽出し、Industry Analysis, Business Strategyとともに、将来キャッシュフローの予測、資本コスト計算、DCF評価、MultipleおよびRisk Analysisまで含めた本場アナリストレポートに匹敵するレポート作成とプレゼンテーションを行うというもので、授業で学んだ理論を実践に活用する、実務に即したカリキュラムとなっております。

Personal Assessment and Development

本科目は、ファイナンスと関連しないものの、留学後のキャリアを考えた場合に必須となる、組織論やリーダシップを3日間で学ぶ授業です。レクチャーに加え、事前に準備した、自分自身に対するこれまでの上司、部下、同僚からの360度評価を元に、自身の強み、弱みを認識した上で、Teaching Assistantによる個別フィードバックがあり、自身の目標設定とそれに向けた具体的な能力開発、取り組み、ステップを具体的にマッピングするという内容です。特に、個別フィードバックは、360度評価の結果に基づく科学的アプローチも活用し、将来の自身のキャリアステップを考える上でも大変実りが多い授業です。

(c) LBS Japan Club 2012▲ ページ先頭に戻る