ロンドン名うての語り手から学ぶ、言葉の技術

MBAの授業に出ていて、これは凄い、という教授に出逢うことがある。教授の実績やフレームワークではなく、「80名もの生徒を、3時間惹きつけ続ける技術」についてである。

 

某教授曰く、MBAは教育産業でありつつ、エンタメ産業でもある。世界各国のリーダーの卵が高額な授業料と時間を投資して来ている。ロンドン・ウェストエンド名物のミュージカルの如く、観客(生徒)に面白い、と思わせ、飽きさせない工夫が必要なのである。

 

MBAの教授は世界中で引き抜き合戦が行われており、評判が良いとなれば高額サラリーでトップスクールへと移籍してゆく。世界ランク4(Financial Times:2018)LBSともなると、名うての語り手が揃うというわけだ。

 

では、その名エンターテイナーたちは、どのように観客を惹きつけているのであろうか。

 

1. テンポ・ケース・アナロジー

2. 参加性

3. 「良い人」であり続ける

  

1. テンポ・ケース・アナロジー

本題に入る前に、前述のミュージカルの話をしたい。

 

ミュージカルの三要素は、歌・ダンス・演技だと言われる。この三要素がお互いに働き合い、作品をより人々の心に響くものに仕上げている。

 

レ・ミゼラブルで言えば、「ジャン・バルジャンは息を引き取り、フォンテーヌが天に導きました」と棒読み朗読されているのを聞くのと、今まさに死にゆく俳優の演技を眼下に、名曲”Do you hear the people’s sing?”の生オーケストラを聞くのと、どちらが心に染み入るか、というのは一目瞭然である。

 

一方、MBA授業を面白くさせる三要素は、テンポ・ケース・アナロジー、およびこの3つの相乗効果であると考えている。

 

「テンポ」:テンポは、語り口、内容展開、それぞれの速度のことで、これが心地よく進まないと退屈してくる。落語やオペラ、ミュージカルといった観劇産業では、「良い音を良いテンポで出していると、音が全く意識されないようになり、観客は言葉のみに集中できる」そうだが、全く同じである。

 

日本の大学では、何年間もアップデートしていないページを上から順に読みあげるのみの退屈な教授がいると聞いたことがあるが、同じ科目でも、生徒が入れ替わるし時代も進む以上、生徒の理解度・興味は昨年と今年では違う。その場の雰囲気に合わせてテンポをカスタマイズして、盛り上がったところは時間を使い、そうでないところはカット、という臨機応変な対応ができる教授は面白い。

  

「ケース」:ほとんどの授業ではケースやゲストスピーカーが用意されるが、これらは満足度に大きく影響する。生徒をengageさせられるケース・ゲストスピーカーは下記の条件に沿っている場合が多い。

 

  • 「手触り感のあるケース」:技術難易度が高く背景説明が複雑になるケースや、抽象的な描写に終止しているケースはどうしても盛り上がりにくい。反対に、「トッテナム・ホットスパーの新スタジアム建設の投資判断」といったトピックはイメージしやすく、敷居が低く面白い。

 

  • 「具体的な裏話が聞けるゲスト」:表面的な戦略論に終始しがちな方に比べて、現場で血反吐を吐いてきた起業家や経営者の苦労話、例えば著名な広告展開の裏にどんな葛藤があったのか、といった話は人を惹き付けることが多い。まさにこの点が大都会に位置するLBSの強みであり、多種多様な産業のトップリーダー・起業家を招聘している。

 

「アナロジー(比喩):「腹落ち感」という言葉がコンサル業界ではよく使われるが、それは「なんとなく分かっていることだけれど、改めて強く納得し」、「行動に一歩近づく」ことである。MBAでも、完全に知らなかった知識を教わってふむふむ、ということもあるが、AHA!となる瞬間の多くはこの「もやっとしたものが整理される」腹落ち感であり、そこには教授による効果的なアナロジーが寄与していることが多い。

 

更にいえば、アナロジーは遠い世界から持ってきたほうがAHA!感が高まる。例えば、「テレビの価格戦略をPCの価格戦略と比較する」よりも、「テレビの価格戦略を、千両みかんの事例からの意味合いで考える」方が圧倒的に面白いのである。(詳細は東洋ビジネスオンライン・御立尚資氏の記事を参照のこと)

  

2. 参加性

日本の大学で寝ている生徒が多く、LBSではそれがありえない理由の一つに、この参加性がある。授業は教授の語りだけで完結するものではなく、生徒・ゲストスピーカー・ホワイトボード・スライド・映像の一体商品として捉えるべきである。

 

ウェストエンドの人気ミュージカル、マンマ・ミーアは、ショーの最後に、総立ちの観客を煽り、観客・オーケストラ・キャストが一体となってABBAの曲を手拍子し、踊る一幕があり、これが楽しくて足繁く何度も通うファンが続出する。

 

それと同じく、エンターテイナーとして知られる教授は、生徒を本当に効果的に巻き込む。Strategy and Entrepreneurshipの看板教授、Costas Markides教授は、生徒のengagementにおいて最高峰といえる。人の認知の癖と、それが組織に与える影響を説明するために、まず生徒に紙や数字を使った簡単なエクササイズをさせたり、それを元にディベートさせたりする。ついつい生徒が盛り上がりすぎた結果、まんまと教授が導きたい(間違った)結論にたどり着いてしまい、それを指摘されガクッとなる。この一連のプロセスのあとに説明される理論の腹落ち度は格別であった。

 

3. 「良い人」であり続ける

「良い人そう」な人の話は少々出だしが躓いても聞きたいと思うし、「なんか癪に障る」人の話は出来るだけ聞きたくない、この反応は古今東西共通するのではないか。

 

「熱心に聞き、発言にも参加する」生徒の割合、いわば授業の「視聴率」を維持するため、冒頭で恐怖政治に走る教授がいる。例えばいきなりコールドコールからスタートしたり、デバイス利用を禁じたり、事前課題を読んできたか確認する、等々。結果として視聴率は高まるけれど、この手の教授の話は大体面白くない。語りだけで視聴率を維持できないからこそ、恐怖政治に走るのかもしれない。

 

人気授業として先輩から代々語り継がれる教授は、このようなことはしない。前述のCostas教授は、まず愛嬌たっぷりの笑顔と口調で、開始3分で心を鷲掴みにする。その後も、独特のホワイトボーディング(ポイントワードだけ書くのではなく、結論をハイトーンボイスで話しながら文章全体を書き殴る)およびギャグセンス(出身のキプロスの自虐や、非ネイティブであることを逆に面白可笑しく使った誇張的な形容詞遣い等)、あるいはなんとも目が話せないテンポの緩急により、恐怖政治をせずとも9割以上の視聴率を保ち続ける。

 

 

MBAの本質は授業以外にある(ネットワーク・リーダーシップ等)というのは間違いないのだが、一方で授業もいずれ陳腐化する知識それ自体ではなく、名うての語り手の話を見れる、という視点で観ると大変に学びが多い。言葉の技術はほとんどの職種で必要となるだけに、MBAはこのような観点でも学びがある、ということをお伝えできれば幸いです。

London CAPを終えて

今週は多くのMBA生がほっと一息ついているはずです。というもの、今週は多くのMBA生が約3か月に亘って精力を傾けてきたLondon CAPの顧客向け最終プレゼンが終わったためです。当方もつい先日無事に終わり、(それなりに?)顧客に喜んでもらえたので、この機会に皆さんにLondon CAPの全体像をお伝えしたいと思います。LBSに入学を決めた方、並びにLBS受験を検討されている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

 

<London CAPとは>

(在校生も知らない人が多いかもしれませんが)London CAPは、”London Core Application Practicum”の略です。主にロンドンを拠点にしている顧客に対して、LBSのMBA生が3-5人程度のチームを組んで行う、コンサルティングプロジェクトを指します。我々MBA2019は2017年8月に入学し、それ以降、各種必修授業で様々なフレームワークや考え方を学んできましたが、London CAPでは実戦形式を通じて過去の学びを整理するとともに、その学びを如何に現実の問題解決に応用できるかを経験すること等を目的としています。とはいえ、London CAPは実は選択科目(Tailored Core)であり、希望者のみが履修することとなります。

コンサル対象となる顧客は各チームが独自に見つけてくるのではなく、事前にLBSの事務局が潜在的な顧客と調整をし、先方とプロジェクトの目的を確認し合った状態で開始します。その顧客数たるや、合計60案件以上。ここには営利企業のみならず、NPOや政府系組織等の非営利団体も含まれています。具体的な業界としてはFashion, Luxury, Retail, Travel, Leisure、Financial Services、Government and Third Sector、TMTなど、非常に幅広い業界が網羅されているため、学生側によってはかなりの確率で自分が興味のある業界とのやりとりが期待できます。今回対象となった60 超の具体的な組織名は守秘義務の関係で開示できないのですが、過去(London Business Experienceと呼ばれていた時代)にはAmazon、the Bank of England、Transport of London、the British Fashion Councilなどが顧客として本プロジェクトに参加しています。

London CAP履修への流れですが、前述の通りLondon CAPは選択授業のため、まずその他選択授業と同様に入札形式で本授業を落札する必要があります。その後無事に履修が確定すると、上述の業界に関する希望順位を選択します(この時点で、各業界内の具体的な組織名も確認可)。その後、業界が確定した上で、今度はその業界内で希望組織を選択し、最終的にコンサル対象組織が確定します。周りの学生を見ていると、希望業界についてはほとんどの人の第一希望が通っている印象を受けます。一方で業界内の個別組織については、第一希望はなかなか通っていない印象です。これは、やはり学生側は自分が見聞きしたことのある組織や急成長している組織を選択しがちで、それら組織に人気が集中することが主な理由かと思います。

 

<ロンドンのFintech企業に決定>

当方は全く以てファイナンス出身ではありませんが、ロンドンにいるとFintech企業の台頭を日々の生活でもひしひしと感じるため、そんな伸び盛りのFintechってどんなもんや?という単純な興味で、業界はFinancial Serviceを希望し、見事ロンドンを拠点にした創業7年目、社員80人程度、かつ急成長中のFintech企業のコンサルを行うことになりました。同社は現在イギリスでのみ活動している一方で、今後は海外進出を考えており、今回のコンサルプロジェクトで回答すべき質問は「どのマーケットへの進出が良いのか」、及び「そのマーケットに最適な商品は、既存商品の中のどれなのか」というものでした。

尚、London CAPでは所謂必修授業のStudy Groupとは別に、個別のチームが形成されます。これは学校側が組成するのですが、当方のグループは以下の構成でした:

1.フランス人・男性・エネルギー出身

2.インド人・男性・ファイナンス出身

3.ペルー人・女性・ファイナンス出身

4.ニュージーランド人・男性・ファイナンス出身

5.当方・男性・エネルギー出身

いずれのメンバーとも過去に一緒にプロジェクトを行ったことが無かったため、物事の進め方や考え方の違いを学ぶ良い経験になりました。

プロジェクトの大まかなスケジュールですが、2018年2月に対象組織とチームメンバー確定の連絡を学校側から受領し、同2月末に対象組織とのKick-off会議を実施。以降、顧客とは隔週で電話会議、かつ隔週で会議を行ってきた上で、5月半ばに顧客向け最終プレゼンを行う、という流れでした。他のLondon CAPチームの話を聞いてみると、当方のチームの顧客側とのやりとりの頻度は少し多めのようでしたが、密なやりとりのおかげで情報交換を円滑に行うことが出来たことに加えて、お互いの信頼関係みたいなものも醸成されたように感じています。

会議の際(電話会議含む)、顧客側からはプロジェクトマネージャーに加えて、必ずFounder兼COOが参加していました。この点は、プロジェクトを進めていく上で非常に効率的でした。というものCOOがいることで、プロジェクトを進める上で確認が必要な前提条件や先方の要望等を会議の場で即座に把握できるため、その後の動きを素早く展開することが出来ました。また不定期的にCo-founder兼CEOも会議に参加し、異なる視点からコメントや助言をくれたことも非常に有意義でした。

彼らとのやりとりを通じて感じたのは、小規模ならでは意思決定の早さに加えて、彼らの組織が非常にフラットな点です。仮にCEOまたはCOOが何か意見を言った場合でも、プロジェクトマネージャー(入社3年目)は意見が異なる場合は真っ向から反論します。そして、その際の説明や考え方が正しいと感じた場合は、CEO/COOは彼の意見を尊重し、結果的にその意見がコンサル案件を進める上での重要な前提条件になる、ということが度々ありました。

さて肝心のコンサル内容自体ですが、当方としては業界慣習、商品知識が無いため、最初は数字を見ても感覚的に良し悪しを掴みにくかったのですが、ファイナンス出身の回りのメンバーにも助けられつつ業界全体像の把握に努め、数字間の相対的な関係を徐々に把握することで、最終的にはそれなりに纏めることが出来た、というのが正直な印象です。この門外漢としての出だしのハンディキャップはあったものの、頻繁に顧客とやりとりをすることで常に微修正を繰り返すことが出来たことが、最終的な顧客の(一定の)満足度にも繋がったのではないか、と思います。

また当方のチームの運が良かったと思う点として、顧客側も非常にLondon CAPに対して前向きたった、という点が挙げられます。具体的には、顧客側から積極的に必要な情報開示を行ってもらえたこと、中間・最終成果物の具体的なイメージを先方から事前に共有してもらえたことです。周りのチームの話を聞くと、守秘契約を結んでいるにも関わらず情報開示を渋る顧客や、顧客が要望するゴール自体が二転三転する顧客の話も聞いていましたが、我々としてはこの点は全く問題ありませんでした。

さらに、彼らから「いつでもオフィスに来てくれ、席はいつでも準備するので」との申し出をもらったり(さすがに時間がなくてオフィス常駐はできませんでしたが)、ある時は社員限定のTownhall会議に呼んでもらい、今後の会社全体の戦略や新規プロジェクトチームの立ち上げ等に関する情報が飛び交っている場にも立ち合わせてもらえました(「これ、絶対秘密ね。」との念押し付きで)。しかもその後はStartupらしく、その場でビールを飲みながら卓球をしつつ、本コンサル案件に関与していないその他社員とも交流することが出来ました。これらは我々が顧客のことをよく理解するための顧客側の配慮であり、実際に我々にとってもそのような機会となりました。

 

<London CAPを終えて>

上記がLondon CAPの全体像、及び当方が体験したLondon CAPの様子ですが、この経験及び周りのチームの意見等を踏まえてLondon CAPの良かった点、難しかった点が見えました。以下、簡単ですが、箇条書きで感じたことを共有したいと思います。

(良かった点)

‐(創業7年目の会社をStartupと呼ぶかという議論は別にして)Startupの仕事の進め方、スピード感、フラットな組織構成を体験出来ました。加えて、Fintech企業の着眼点や業界の見方を学ぶことが出来ました。当然広いFintech業界の中のわずか一社について理解しただけで業界を俯瞰することはできませんが、少なくとも大企業で社歴を積んできた当方としては、考えさせられる点が多かったように思います。

‐簡易版ではあるものの、コンサル案件における物事の進め方や顧客との連携具合等を体験することが出来ました(この点について、実はLondon CAPの学校内中間レビューという位置づけで担当教授及びBainのコンサルタントからも途中でアドバイスも貰えます)。特に各種情報収集ではなかなか包括的な情報を入手しにくいですが、一定の仮説を置いた上でその仮説を検証し、全体を前に進めるという良い訓練をする機会になりました。

‐新しい同級生との関係を構築できたことは、非常に有意義でした。特に顧客とのやりとりをいくつか問題に直面した際に一緒に悩んだチームメンバーとは、明らかにそれ以降打ち解けることが出来たように思います。これはMBAを通じての大きな目標でもあるため、少しずつ人脈が形成できるいる点は、単純に嬉しく思います。

(難しかった点)

‐学生側は当然顧客側からの報酬は無い前提で案件に従事しているので、チームとして対顧客にどの程度コミットすべきかの落としどころが難しい。当然顧客側は仕事の一部として真剣にやっているのでこちら側への期待値も高いのですが、学生からするとLondon CAP以外にも授業、クラブ、就職活動、試験勉強等を並行で行っているため。明確な解決策はないと思いますが、顧客との議論の中で適宜軌道修正するなりして、顧客の要求レベルを現実的な範囲に収めることが必要だと思います。

‐ 上記に似ていますが、チーム内でも忙しさ、London CAPに対する真剣度等は異なります。当方のチームでは、常に全力投球してくるメンバーもいれば、締切を守らず、その他メンバーが土壇場でフォローに回るということが何度か起こり、チーム内の不満が溜まったことがありました。個人の性格やその瞬間の忙しさ等もあってある程度仕方ない側面もあると思いますが、チーム内の温度感をもっと揃えることが出来れば、より満足感の高い経験になったと思います。

‐ 当方の顧客は問題ありませんでしたが、周りの話を聞くと、顧客の質にかなりムラがあり、例えば情報開示が不足していて案件を進められなかったり、学生側に十分な役割が与えられず、学生がやや手持無沙汰になったりするケースもあったようです。また学校側の事前の顧客側との握りが甘かったため、プロジェクトの目的設定から開始しないといけないチームもあり、貴重な時間を無駄に費やしたチームもいました。来年度のLBS事務局側の顧客スクリーニング向上及び事前の丁寧な確認作業を期待したいと思います。

 

今週、学校主催でロンドンにある瀟洒な会場で、London CAPの全体打ち上げパーティーが行われました。会場にはLBSの教授やLondon CAP事務局に加えて、(都合により参加できなかった顧客もいたものの)大多数の顧客、参加したMBA生、Bainコンサルタントなどが集まり、プログラムの成功を祝いました。その際、我々は当チームの顧客から「是非1-2週間以内にみんなで夕食に行こう。ありがとうね」と声を掛けてもらいました。最終成果物に対する顧客満足度は確認していませんが、少なくとも100%不満だったらこんなお誘いは無いと思うので、チーム全員でほっとしたのをはっきりと覚えています。

ここまで来たら、逆にロンドン有数の高級レストランを我々の方から逆指名しようと目論んでいるのは、言うまでもありません。

 

以上

MBAで考える、「ずっと一緒にいたい」チーム、「早く帰りたい」チーム

5,6月のロンドンは本当に美しい。白鳥が泳ぐハムステッド・ヒースの池の周りで寝転ぶ人たちに混じっていると、自分のつまらない悩みなどどうでも良くなってしまうほどの美しさがあるし、小難しいテーマでも考えてみようかという気になる。MBAに在籍していて物凄く勉強になることは、「リーダーシップと人の成長」、とりわけ「刹那的な関係においてどのようにチーム・ダイナミズムを作り上げていくか」、ということ。

 

フレキシビリティを推すLBSには、グループワーク・クラブ・インターン等多様な機会が転がっている。一方でそれらの大半は給料が発生せず、かつ皆活動を掛け持ちしているので、誰もやる気を見せないチームになることもあれば、全員がプロアクティブに参加して信じられない熱量になることもある。仕事と違って義務も階層もないため、良いチームを作り・皆が成長する環境にするのは本当に難しい。

成功したもの・失敗したもの様々な案件を振り返って強く思うのは、全員の一挙手一投足が強く見られておりそれによって人のモチベーションは大きく変わるということ。例を挙げると…

・グループワークにおいて、クライアントに短期間でどのように価値を出せるか、という前向きな話で3人が盛り上がり議論開始。そこに遅刻してきた1人が「授業なんだから簡単に終わらせようぜ」と椅子をブラブラさせながら発言。皆沈黙。モメンタムは崩れ最後まで戻らなかった

・一人が提案した案件。最初は実現の難しさからみな消極的だったのだが、別の一人が「こんな風に捉えれば面白いんじゃないかな。さっそく調べてみる」と笑顔で話して以降、全員が前のめりで信じられないアウトプットが完成。そのまま優勝

・チームでの議論。リーダー格が忙しさにかまけ、顧客満足ではない尺度(自分たちの論理)を顧客に提案しようとしたたった一つの発言で、メンバーの心が完全に離れる

 

この一挙手一投足の重要さにおいて、特に自分がリーダー格で関わる場合、この顧客のため・地域のため、等プロジェクトの意義深さを共有できること、加えてその案件の「各メンバーにとっての意味合い」を語れることが肝要であると感じている。(あなたの志と間接的にこう繋がるよね、過去の経験と全く違うこのロールをやることでこう成長できるよね、等)そして前提として、言行一致・一貫性(誰に対しても同じように真剣・前述のビジョンと相反する発言をしない等)が必要であるのは論を俟たない。

 

次は、僕自身は何一つ出来ていないことであるので会社の先輩の受け売りになってしまうが、「自身がチームから憧れられる何かを持つ」ことの重要さである。それと相反するようだが、「自身も発展途上であることを強く自覚する」ということも必須であると感じさせられる。こちらも例を挙げると…

・僕が学生のメンティーに対し、経験値が違うからか、あるいは愛情からか、「こうしたほうがよい」を超えて「こうすべき」のようなトーンで提案をしすぎ、心が離れてしまい頼ってくれなくなった

・インターン先の社長・副社長。彼らのビジョンは常に未来を向いており、この人達と一緒に未来を作っていきたいと思わされる。それと同時に、若造の私に常に意見を求めてくれ、かつ「君と話すと大変学びになる、信頼しているぞ」という姿勢を前面に示してくれる

・クラブ活動においてあまり時間を使わない一人がクライアントミーティングに参加。そこで目にしたものは、CEOが持つビジョナリーな発想と現状に満足せずアドバイスを求める姿勢、それに呼応して必死にサポートを行うマネージャ。その後そのメンバーは人が変わったように成長・貢献

といったことがあった。

 

僕が大切にしている概念に、「数週間・数ヶ月で人は変わる」というものがある。誰しも、先輩にかけてもらった一言、あるいは周囲へのアドバイスで、自身や周囲が「人が変わったように」成長した姿を見た経験があると思う。一方で、「どのようにチームと接すれば周囲の成長の手助けとなれるのか」という「リーダーシップと人の成長」については、正解もなければ、日常の仕事で試す機会も限られる。その上でMBAは(ほぼ)ノーリスク環境下で、自分の様々なリーダーシップの型やチームダイナミクス作りを試すことができる(細かいグループワークを含めれば、年間20以上の異なるチームと協業可能)、ということが、個人的には座学や学位以上に貴重であると考えている。

 

もし読者のみなさまが、「閉じた環境なのでチーム作りやリーダーシップの考えが狭まる」あるいは「制度上、リーダーシップポジションまで時間がかかる」等の問題意識をお持ちであれば、MBAというのは良い選択肢の一つになると思いますし、その上で多様な活動に従事できるLBSを選択頂ければ本当に嬉しいです。

リンダグラットン教授 The Future of Work

リンダグラットン教授の授業「The Future of Work」を受講しました。

ズバリ「未来」をテーマに、毎回刺激的なクラスディスカッションと豪華なゲスト講演者との対話が繰り広げられ、LBSのキャッチフレーズである「London Experience, World Impact」を象徴する授業だったかなと感じています。個人的にはこれまでの1年半でベスト授業でした。

 

■教授について

著書「LIFE SHIFT」「WORK SHIFT」がベストセラーになり、最近では日本政府人生100年時代構想会議のメンバーを務めている事もあり、日本でもよく知られるようになったかと思います。

人材論・組織論に関する世界的権威、Thinkers50の常連、ダボス会議毎年登壇、LBSでは1989年(!)から教授を務める重鎮で、今も世界中を飛び回っていますが、実物は笑顔が素敵できさくなおばちゃんです。日本が大好きで最近は日本料理を作ることにトライしているそうです。

日本語でもたくさん記事がでていますが、個人的にはこれが一番彼女らしさが出てるかなと思います。http://www.1101.com/lynda2/

 

■授業について

テーマは「人と組織の未来」。選択科目のひとつとして、1週間・全10コマの集中講義形式でMBA・Executive MBA約80名が受講しました。「LIFE SHIFT」「WORK SHIFT」の内容を題材にしつつ、豪華なゲスト講師もたくさん招きながら、毎回幅広くふかーいクラスディスカッションが重ねられました。詳細はここに書ききれないのですが、エッセンスだけでもお伝えできればと思います。

 

最初の4回の授業は、私たちの未来に大きな影響を与える事象である「テクノロジー」「エネルギー問題」「グローバリゼーション」「長寿化」の」4テーマについて議論しました。

例えば「テクノロジー」では、AIやロボティクスをはじめとした技術革新に伴い、個人の働き方、企業・政府の役割などが今後数十年にわたってどのように変わっていくか、変わっていくべきかといったテーマについて議論しました。LBSの多様性を象徴するように、テック企業出身者・建築家・医者など様々な背景を持つ受講生から多面的な意見が出て非常に刺激的なセッションでした(この点は全回共通)。ゲストは、インドのTataの方がカルカッタからSkype参加、同社の先進的な働き方や従業員向けの教育システムについて紹介いただきました。

「エネルギー問題」はShellの方がゲスト。Shellが長年取り組んでいるシナリオプランニングによる未来のシナリオについてプレゼンがありました。

「グローバリゼーション」では英Economist誌の著名ライターをゲストに、グローバル化の進行に伴い世界各地で現れている都市化、貧富の差の拡大やポピュリズムといった課題、またソーシャルネットワークによる影響などの幅広いトピックについてホットな議論が交わされました。「長寿化」では世界の人口構成の変化に伴う影響を取りあげ、リンダ教授の目下最大の関心事である日本についても多く時間が割かれました。(ちなみに毎回のように日本に関する言及があったのですが、英語を話せる人が少ないことや起業家の少なさについては周りの学生からとてもとても驚かれました。)

 

後半の6回では、クラスでの講義・ディスカッションおよびグループワークを通じ、前半4回の世界的な潮流を踏まえ、企業・政府がどのように対応すべきか、またわれわれ一人ひとりがどのように生きていくか、を考えていきました。

ゲストにはStandard Chartered Bank元CEO・英国元貿易大臣のMervyn Davies氏、世界最大のNPOのひとつであるSave the Childrenの元CEO Jasmine Whitbread氏を迎え、急速に変化する現代・未来におけるリーダーシップのあり方・人としての生き方について多くの示唆的な言葉を得ることができました。ちなみに、このクラスのゲストを呼べるのはリンダ教授の人脈のなせる業と思います。

 

以上のとおり、議論のテーマは果てしなく幅広いもので、何時間でも議論が尽きないのですが、それをファシリテートするリンダの教授力は圧巻でした。

話の引き出しの量と深さもすさまじいです。「その点についてはデンマークに面白い会社があって。。」「前にシンガポールの大臣とこんな議論をしたんだけど。。」「こないだチャドに行ったときにこんな話があってね。。」とかそんな感じ。

 

授業では教授の著書の内容に加えて、出版後に本人が世界を回って考えたことや、最新の研究内容(例えばhttps://sloanreview.mit.edu/article/the-corporate-implications-of-longer-lives/)もカバーされ、学生・ゲストとのディスカッションとも相俟って「この教室の中でしか得られない学び」を得た感覚を強く持っています。

 

「LIFE SHIFT」のメインテーマであり、リンダ教授が人生100年会議でも発信している事ですが、日本人の多くが100歳まで生きる可能性が高い中、企業の雇用・働き方の仕組み、また個人の人生設計もがらっと変えていく必要が大いにあるなぁと改めて痛感しました。リンダ教授はこうした課題について第三者的にでははなく「我が事」として考える事を常に強調され、私自身このクラスでの学びを踏まえ、自分のできる事を具体的に行動を移して行きたいと思います。

リンダ2リンダ

 

 

Luxury Strategyについて

1年目の1学期はすべてCoreという必修科目の履修になるのですが、実は私は4科目のコアに加えてLuxury Strategyという授業を+αで履修していました。これは、来年より正式にElectiveになることが決まった授業で、私が受けた時はElective化する為に授業開講実績が必要なため特別開講されていたものです。

 

Stefano Turconi教授:

この授業を教えるStefanoというイタリア人の教授は個人で様々なラグジュアリーブランドにコンサルをしている実務畑の方で、実体験を踏まえたエピソードや、彼の顧客をスピーカーとして連れてきたりと、ビジネスの現場とのつながりをしっかりと活用した授業になっています(London CAPのLuxury and RetailのリードもStefano)。Stefano:https://www.london.edu/faculty-and-research/faculty/profiles/s/stefano-turconi

 

受講生と選考:

全ての会に業界のスピーカーが来る為、生徒全員が全授業に主体的に参加をすることが前提となっており、その学生のやる気を見極める為に授業履修の為にはEssayでの選考があります。受からなかった人はWaitlistにアサインされ、欠席者(=欠席した時点で履修リストから外れます)によって穴が開いた席に繰り上げで入っていくシステムです。アプリケーションが必要な他の授業は聞いたことが無いので、この授業がどれだけ人気か伝わるかと思います。

受講生は、MBA、EMBA(Executive MBA)、MIM(Master in Management)、Sloan Programが混じるダイバーシティーに富んだものになっており、MBAだけで履修するCore授業よりも更に次元の高いディスカッションが繰り広げられておりました。

 

授業:

授業は前半1.5時間程度がレクチャー、残りの1時間程度がゲストスピーカーのセッション、その後1.5時間程度がゲストスピーカーとの懇親(一緒にスパークリングワインやビールを飲みながら、立食形式での自由交流)になります。前半のレクチャーでは、欧州を中心としたラグジュアリーブランドのケースを取り扱い(バーバリー、Farfetch、Tesla moters等々)、後半では関連業界の方から実際の話を聞き、さらにはディスカッションを行います。ゲストスピーカーはフェラーリの営業部門のトップから、Reve En Vertというサイトを立ち上げたCora Hiltsという20代の起業家まで様々で、スピーカーセッションを通して多くの学びを得られました。

 

フェラーリチャレンジ:

この授業の一番のお楽しみは、実は授業が終わった後に開催されるフェラーリチャレンジです。これは、同社の設定したお題をグループで考え、フェラーリの経営幹部に対してプレゼンをするものです。優秀グループに選ばれると、なんとイタリアのフェラーリの工場へ招待されるというミラクルな特典付き。私も、クラスメイトとチームを作り挑みました。残念ながらフェラーリ工場への切符は勝ち取れませんでしたが、EMBAを交えた多様性のあるチームで一つのアウトプットを目指してチームで戦った経験は大変学びが大きいものでした。

 

皆さんも、もしLBSに来られることがあれば履修を強くお勧めする授業の一つです。

 

写真:フェラーリチャレンジの打ち上げをパブでしているところです。

Luxury strategy

(c) LBS Japan Club 2012▲ ページ先頭に戻る