MiFへの出願を考えている多くの方は、一度くらいはMBAへの出願も考えたことがあるのではないでしょうか。

そこで、本稿ではMiFとMBAの違いについて、書いてみようと思います。※

【※本稿は必ずしもMiFを何が何でもお薦めするためではなく、あくまで違いをなるべく客観的に分かっていただいた上でそれぞれにあった判断をしていただくために書いています。筆者は現在MiFの学生ですが、昨年は別の学校でMBAコースに通っていました。それは1年制で別の学校なので必ずしもLBSのMBAとMiFを直接比較しているわけではないこと、また、あくまで筆者自身の経験に基づいた主観であることについては、御理解いただければ幸いです。】

 

(目的)

まず、MiFとMBAではその目的が異なります。

どちらのコースも、グローバルリーダーを育てることは共通の目的ですが、MiFはファイナンスのエキスパートを育てることが目的あるのに対し、MBAは経営全般のジェネラリストを育てることが目的です。ただし、例えば企業戦略等の経営面は財務諸表や株価等のファイナンス面に顕著に表れるという意味においては、MiFが経営全般を見ていないというわけではなく、ただファイナンスというツールを通して経営全般を見ている、ということなのだと筆者は考えています。

 

(カリキュラム)

MBAではファイナンスはもちろんのこと、マーケティング、組織行動論、企業戦略、アントレプレナーシップ、イノベーション、経済学など様々な科目を広く学ぶと同時に、プレゼン、コーチング、文化の多様性の理解、リーダーシップ論、グループワーク等のソフトスキルにもかなり力を入れます。また、MBAでは上記の様々な科目を統合して、総合的なビジネスプランの作成や起業家の立場となって投資家向けプレゼンを行うといった授業があります。

一方で、MiFでは学ぶ内容はとにもかくにもファイナンスです。コーポレートファイナンス、会計、投資がコア科目で、選択授業も一部を除いてファイナンスです。MBAでのファイナンスはいわゆるコーポレートファイナンスが中心ですが、MiFではデリバティブや、証券分析等の投資関連の授業も多く、自分の興味に応じて「Corporate Finance」のほか、「Risk Management & Derivatives」「Investment Management & Analysis」の三つの中から専攻が選べます(選ばなくても大丈夫です)。もちろん、MiFもプレゼンやグループワーク等のソフトスキル教育を行います(ただし、MBAと比べると少ないと思います)。

 

(コーホート)

他の大きな違いとしては、生徒のバックグランドが挙げられると思います。一般的にイギリスのMBAは3年程度の実務経験を要する点ではMiFと同じですが、MBAでは業種に特に制限はありません。一方、MiFではファイナンス分野での経験である必要があります(もっとも、「ファイナンス分野」の捉え方はそれなりに広く、銀行やアセットマネジメント等でなければならないということはなく、一般企業の財務部、コンサルや官庁等からも経験次第では十分入学可能です)。MBAではほぼ全員が異なる分野・ポジションの経験者であり、その多様性が議論に幅を持たせてくれたり、新たなアイディアが生まれる一方、MiFはファイナンスをよく知っているということが前提であり、それによりファイナンスに関する議論のクオリティと深度を保つわけです。

 

(メリット・デメリット)

MiFのメリットとしては、1年間、実務経験ある仲間たちと深くファイナンスの勉強に集中できることです。その点、1年制MBAでは、一年間であまりに多くの分野をカバーするため、良くも悪くも「広く浅く」となります。また、MBAではファイナンスのエキスパートのような生徒もいれば、初めて触れるという生徒もいるので、進度はある程度後者に合わせる必要がありますが、MiFにおいては授業スピードがとても速く、例えば筆者が1年制MBAで40時間程度の授業で学んだコーポレートファイナンスの範囲は、MiFでは1学期の最初の15時間弱の授業でほぼカバーしてしまったように思います。

一方、MiFにもデメリットはあります。特に就活における認知度はMBAの方が圧倒的に高いと言わざるを得ません。MBAなら誰でも知っていますが、MiFと言われてすぐに分かる人はイギリスの会社の採用担当者でもそうはいないようです。もちろん、LBS自体は広く知られていますが、そもそもMBAしか採用されないポジションもあり、そこのフィルターに引っかかってしまうこともあるようです(LBSのキャリアセンターの方針としては、学校での採用説明会において「MBAのみを対象とする説明会」は断っていますし、MiFとMBAとを「同等」に扱うよう働きかけているようですが、まだ道半ばというところのようです)。また、MiFと聞いて、実務経験前コースを思い浮かべる人が多いようです。実際、イギリスで実務経験者のみを対象としたファイナンス修士コースを提供している有名校はLBSとケンブリッジくらいですし、世界でもそう多くはありません。MiFは実務経験を有し、理論も体系的に学んだ、ファイナンス分野の「即戦力」なのですが、そのことが必ずしも十分に浸透していないことが一つのネックであると言えるかもしれません。就活中のクラスメイトたちは、MiFについてきちんと「実務経験後のコース」であることなどを採用側に分かってもらう努力をしているようです。

 

(どちらを選ぶべきか)

MiFとMBAは似て非なるものです。MiFはMBAの代替手段ではありませんし、逆もまた然りです。ビジネススクールというとどうしてもすぐにMBAを思い浮かべてしまいがちですが、自身のニーズに応じた様々なコースがあります。実際、LBSにもMiFとMBA以外にもMiMやMFA、Sloanなど様々なコースがあります。ファイナンス分野でのキャリアを追っていくのであればMiFは最適だと思いますし、MBAも言うまでもなく強力な武器です。一方、ファイナンス分野以外で働きたいが、知見を広げる目的でファイナンスを学びたいというのであれば、MiFは「たすきに長し」だと思います。

MiFとMBAのどちらを選ぶべきかは、当然ながら、結局のところ自身の将来のキャリアゴール次第です。いずれにしても決して安くない授業料と機会費用を払うのですから、今一度そのゴールを良く考えてみた上で後悔のない選択をしていただきたいと思います。

 

本稿がそのための一助となれば幸いです。

(c) LBS Japan Club 2012▲ ページ先頭に戻る